2021.03.09 【照明総合特集】ウィズコロナ/IoT時代に応えるCSL/HCLの取り組みも加速

非住宅分野は苦戦が続くが、21年度は持ち直す見込み

 国内の照明市場は、コロナ禍の影響により、非住宅分野での苦戦が目立っている。半面、巣ごもりによる家庭内の照明環境の見直しに加え、在宅勤務の普及によりデスクライトといった業務の必需品とも言える照明需要が増加している。ただ、住宅分野での需要増は〝先食い〟との見方も出ている。21年度は、今年度よりも全体的な需要は回復するとの見通しが強いが、19年度水準まで戻るのは、もう少し先の話になりそうだ。

 国内の照明市場は、日本の社会が人口減少局面にあることもあり、照明器具の出荷台数は漸減傾向にある。今年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でそれが加速した形だ。

 コロナ禍で非住宅用が落ち込む

 飲食店やホテルなどコロナ禍の影響を最も受けている分野を中心に、工事予定だった案件が中止、または延期されるなどが各地で続出。日本照明工業会(JLMA)の出荷統計を見ても、昨年4-12月累計の照明器具出荷台数は4727万3000台と前年の同時期に比べると1割近く減少している。特に住宅用より非住宅用の落ち込みが目立つ。

 ただ、年度も後半に差しかかると回復の兆しも見えてきた。昨年12月単月で見ると、前年同月比3.4%減でとどまっている。住宅用は同1.2%減と前年並みにまで近づいている。

 この流れは来年度も継続するとの見方が強い。しかし、「市場環境は予測しにくい」(平岡敏行会長)とし、コロナ次第で状況が変わるため、予断は許さないと業界では気を引き締める動きが強い。

 紫外線ランプ/LEDの需要が高まる

 市場では、コロナ禍で高まる衛生・清潔ニーズに応える紫外線ランプ/LEDの需要が高まっている。「人々の生活を照らすあかり」といった本来的な照明とは異なるものの、紫外線ランプを使って空気を清浄化する機器や、照射場所を除菌する照明器具のような機器も登場してきている。紫外線は人体への影響もあるため、一般住宅への導入は簡単ではないが、非住宅では、例えば病院や介護施設、店舗など衛生・清潔が強く求められる分野での導入が期待されている。

 1年以上にわたってコロナと共存する生活が続いており、ウイルス抑制・除菌に対するニーズは今後も衰えることはないはずだ。非住宅分野を中心に、紫外線を使った照明タイプの除菌機器は導入が進むだろう。

 IoT化で他機器と連携

 一方で、照明にもIoT化の波は押し寄せている。天井という〝支配的な立地〟にある照明は、センサーとAI(人工知能)、IoTなどを組み合わせれば、他機器にはない強みを発揮する可能性を秘める。照明だけでなく、他機器と連携する上でも高所は格好の立地で、それは屋外照明でも同じだ。

 業界の目指す方向としてJLMAが示す、CSL(コネクテッド・スマート・ライティング)と、HCL(ヒューマン・セントリック・ライティング)。ともにIoTをベースとし、他機器との連携や効率的な管理などを軸とするCSL、生活シーンやリズム、人に合わせた優しいあかりの実現を目指すHCLが、各社の戦略の要になってくる。各社とも既に取り組みを加速しており、照明と音響の融合をはじめ、スマートフォンからの操作、カメラと照明の一体化などを進め、製品単体にとどまらないサービスの提供にも乗り出しつつある。

 アフターコロナを見据える

 コロナ禍が続くため、今後の市場環境は不透明だ。依然として厳しい飲食や旅行関連などでは設備投資の抑制は継続し、照明設備の更新需要にも影響してくるだろう。住宅分野ではシーリングライトやデスクライトなどの盛り上がりはあるが、これらは比較的単価の低い照明で、市場全体を押し上げるほどではない。照明需要自体が漸減傾向にあることを踏まえれば、アフターコロナを見据え、IoT化を生かしたサービスやソリューションの開発が一層重要になるはずだ。

 外部パートナーとの「共創」も

 そこには、自社単独ではなく、外部パートナーとの「共創」も必要になってくる。斬新なアイデアを持つスタートアップ企業との連携など、様々な選択肢の中から、ウィズコロナ/IoTの時代に応える照明ソリューションを実現していくべきだ。