2021.03.15 LNGでもカーボンニュートラルを普及に向け東京ガスなど15社連携
連携団体の設立会見の様子
使用時までに発生する二酸化炭素(CO₂)を実質ゼロにした「カーボンニュートラルLNG(液化天然ガス)」を活用する大手企業などが連携し、団体を設立した。供給する東京ガスの呼びかけに応じたもので、普及、拡大を後押ししながら、国に法的位置づけの明確化などを訴えていく。
設立されたのは「カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス」。調達後に気化して製品化し都市ガスとして供給する東京ガスのほか、供給を受ける、いすゞ自動車や三井住友信託銀行、三菱地所、ヤクルト本社など多業種にわたる15社が加盟する。
認知度を高め利用を拡大させ、参画企業を増やし、利用価値を向上させることを目的にしている。活用企業にとっては、環境へのブランディングにも役立てられる。自治体などにも参加を呼びかけていくという。
カーボンニュートラルLNGは、天然ガスを採掘し、生産から輸送、消費者が燃焼させて利用するまでの間に発生するCO₂などの温室効果ガスを、他地域で省エネや森林保全などを通じて削減や吸収させることで、相殺させるという「カーボン・オフセット」の考え方に基づく。化石燃料を使っても、地球規模ではCO₂が発生しないとみなせるとされる。
国内では東京ガスが先駆けて19年6月に輸入を開始した。欧州の石油メジャー、シェルグループが、世界各地で進めている環境保全プロジェクトで削減などをした分で埋め合わせをしたLNGを調達。20年1月に東京都江東区に開設した水素ステーションに提供を開始し、同年3月には、三菱地所が所有する東京都千代田区のオフィスビルに供給を始めるなどしてきた。これまでに供給した分を含めて、供給契約量は約7000万立方メートルに達するという。
また、今回の連携には参加していないが、北海道ガス(札幌市東区)も同様のLNGを、三井物産を通じて調達することを21年2月に表明している。
ただ、政府や自治体、民間などの温暖化対策を総合的にまとめた「地球温暖化対策推進法」には、カーボンニュートラルLNGについて、具体的な記述がなく、法的な位置づけが不明確なままだという。団体では、環境関連の制度に、CO₂削減策として規定してもらうなどしていく方針だ。
一方、環境省地球温暖化対策課は「LNGの場合、どの工程から相殺させてカーボンニュートラルとして判断できるかなど、検討すべきことは多い」と指摘し、「議論はこれからだ」とする。
こうした連携について東京ガスでは19年から構想を温めて、20年4月から具体化に動き出した。同社は「カーボンニュートラルLNGを拡大していくことは、都市ガス業界としての方針でもある」とし、「電力の再生可能エネルギー化だけでなく、今後も一定程度あり続ける熱の需要について、低炭素化を進めることも重要だと認識している。それに向けた取り組みの一つだ」と話している。
「使用せざるを得ない代替に」
今回の連携に参画する清掃用具レンタルのダスキン(大阪府吹田市)では、カーボンニュートラルLNGからできた都市ガスの導入を決めた。
同社では、全国に45カ所ある工場で、レンタル先から回収した清掃用具のモップやマットを温水で洗浄して乾燥させるなどして、再びレンタルしている。その数、年間のべ約1億5000万枚に及ぶという。その際に大量のガスを使っている工場があり、同社のガス用途としては最多の使用量だという。
まず、4月から東京多摩中央工場(東京都八王子市)で導入し、使用するガスをカーボンニュートラルに変えて、CO₂排出量を抑えていく。同工場では、月間約10トンのCO₂が出されており、このうちの一部が削減される見込みだ。
同社では30年までに全体のCO₂排出量を13年度比で26%以上削減することを目標に掲げている。今後、他の工場への導入も検討していくという。
同社広報部は「必要なエネルギーを削減していくことが一番だが、使用せざるを得ないエネルギーを、カーボンニュートラルに代替できて、CO₂排出を削減できることが魅力だ」とし、連携では「国内では低い認知度を、向上させていきたい」と話している。