2021.03.17 再エネ飛躍の背景に「多様なアクター」太陽光発電協会が京都大とシンポ
パネルディスカッションでは、熱心に意見交換された
太陽光発電協会は17日、京都大学大学院の再生可能エネルギー経済学講座と共同で、Web上でシンポジウムを開催した。再エネ固定価格買い取り制度(FIT)後の再エネをめぐる事業環境の変化や、新しいビジネスモデルなどについて、発電設備の販売会社代表や、大学研究者ら6人が講演するなどした。
立命館大学経営学部のラウパッハ・スミヤ・ヨーク教授は「日本の再エネの2ndステージはどうなるか~ドイツの経験を踏まえて」と題して講演。再エネ普及の先進地、ドイツの事例を紹介しながら考察した。
ドイツは、エネルギー転換の政策として22年に脱原発を達成させ、38年には脱石炭も成し遂げることを掲げている。ドイツの再エネ発電は風力を中心にバイオマス、太陽光などでバランスを取り、20年実績で全体の発電量の46%に達している。19年には二酸化炭素(CO₂)排出量で2億トンの削減効果があったと試算されている。
そうした「飛躍的拡大」した背景に、ラウパッハ教授は再エネの「社会的受容性」を挙げる。再エネ拡大に対しドイツ人は高い賛意を持ち、自宅近くに再エネ設備を設置することにも賛成する意向が強い。ラウパッハ教授は「面白いことに、実際に近くに発電設備がある人ほど、より賛成する傾向が強い結果になっている」と説明した。
そうした点には、再エネ発電所の所有者が多様に広がっていることが大きく影響しているという。19年の発電設備の所有者は、一般市民が30.2%で最多で、農家(10.2%)や、中小の企業(13.2%)も含めると過半に達する。地域電力会社(11.4%)や大手電力会社(5.8%)、投資ファンド・銀行(14.1%)などを上回る。
ラウパッハ教授は「多様なアクターをベースとして再エネが社会に浸透してきた」と指摘。それらが「連携することで政治力を持ち、政治的影響力を発揮できてきた」と振り返った。
また、最後に開かれたパネルディスカッションには、京都大大学院経済学研究科の諸富徹教授を司会役に、講演者らが席を並べた。
京都大大学院経済学研究科の安田陽特任教授は、20年暮れから21年1月にかけて起きた電力卸売市場の価格高騰問題について、「価格が高騰すること自体が悪いのではなく、そこに不透明性や非差別性があるかどうかが問題だ」と指摘。「今回のように高騰があったから、リスクは怖いと流れるのではなく、信頼できる市場を市場プレーヤが一緒になって考えていくことが重要だ」と述べた。
太陽光発電設備の販売などを手掛けるネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ケ根市)の伊藤敦社長は自家消費について、「再エネを普及させることはやらなければならないこと。自家消費を進めることが早く普及できる方法だ」と語り、「今は、FIT以上の盛り上がりを見せている。市場は自動的に大きくなっていく」と述べた。