2021.03.26 【中国拠点特集】中国のEV市場が拡大20年、2桁成長を確保

 中国の電気自動車(EV)市場の好調な拡大が続いている。中国自動車工業協会(CAAM)によると、20年は、中国での自動車全体の販売台数が前年比微減となった中で、EVを含む新エネルギー車(NEV)の販売台数は136万7000台と2桁成長を確保した。21年の年明け後も好調な販売が継続している。

 中国は、15年に世界最大のEV市場となり、その後も順調な拡大が続いている。19年は政府による補助金政策の削減の影響があり、前年比マイナス(4.0%減)となったが、米中貿易摩擦に伴う中国経済減速の影響で19年の中国全体での自動車販売台数が前年比8.2%減となったのに比較すると、軽微な落ち込みにとどまった。

 20年の前半は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う工場のロックダウンや消費低迷により、中国でのEV販売も当初は低調に推移したが、月次のNEV(EV/PHV/FCV)の販売台数は20年7月に前年同月比プラスに転じると、その後は毎月前年同月を上回るペースで推移し、20年トータルの中国NEVの販売台数は過去最高の136万7000台に達した。

 21年の年明け後も好調が継続し、特に21年2月度のNEV販売台数は、前年はコロナ禍の影響が強かったこともあり、前年同月比約6.8倍の約11万台と大きく増加した。CAAMでは、21年のNEV販売台数見通しについて、前年比4割増の180万台への増加を予測している。

 一方、ガソリン車などを含む中国での自動車全体の販売数量は20年は前年比1.9%減の2531万1000台となり、3年連続のマイナスとなったが、年後半にかけて大きく販売が回復した。21年の販売は、前年比4%増の2600万台超と見通されている。

 中国政府は、環境対応車重視の姿勢を強く打ち出している。35年には、中国国内での新車販売の全てをNEV(EV/PHV/FCV)およびHEVとし、ガソリン車を排除していく方針を取る。中国政府は、EVやPHV、FCVをNEVと規定し、生産事業者や購入時への補助金支給、および優先的なナンバープレート発給といった措置を講じている。

 中国は国策として、化石燃料から電力ベースのエネルギーシフトを強力に進めており、今後もEVやPHVの需要は中長期で増加していくことが確実視されている。

 メーカー別では、中国EV最大手のBYDのほか、近年は「中国版テスラ」と評されるNio(ニーオ)や、小鵬汽車などの新興EVメーカーも台頭している。電気バスの専門メーカーも多く、電気バスの輸出でも実績を拡大している。

 これらの動きを踏まえて、日系電子部品メーカー各社は、中国の新エネルギー車市場の成長に照準を合わせた取り組みを強化している。中国ローカルのEV乗用車メーカーや、有力なローカルティア1などへのアプローチ強化を図ることによって、中国での車載ビジネスの一段の拡大を目指している。

 通常、日米欧などの自動車市場では、電子部品の採用まで長い時間を要し、採用が決まってから実際の量産供給が始まるまで最低3-4年は必要とされる。日系電子部品各社は、これらの市場に対し、現在は25年以降のモデルイヤー車に向けたスペックイン活動に注力している。

 これに対し、中国系EVメーカーなどでは、新車の開発期間が極めて短く、搭載する電子部品の選定も1-2年ほどで決着するケースも少なくない。

 これらを踏まえ、日系電子部品各社は、中国系の車両メーカーや有力ティア1に対し、よりスピードを重視した取り組みに力を注いでいる。

 現地での情報収集能力の強化に努め、顧客に近い場所で開発・技術サポートを行える体制を充実させることによって、現地での新規ビジネス創出を推進していく。