2021.04.01 【ウエアラブル用部品技術特集】日本メクトロンが非接触給電対応極薄伸縮コイルアンテナ

[写真1]極薄伸縮コイルアンテナを装着した様子

[写真2]導電性スナップボタンで接続した様子[写真2]導電性スナップボタンで接続した様子

[写真3]非接触給電下でも外部機器と接続し温度を計測[写真3]非接触給電下でも外部機器と接続し温度を計測

[写真4]手首を曲げた状態でも、通信機能を維持[写真4]手首を曲げた状態でも、通信機能を維持

[図1]接触・非接触併用型二次元通信システムの仕組み[図1]接触・非接触併用型二次元通信システムの仕組み

[図2]幅広い分野への応用[図2]幅広い分野への応用

[図3]用途別 階層化された無線給電システム[図3]用途別 階層化された無線給電システム

 日本メクトロンは、総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)の下、非接触給電対応の極薄伸縮コイルアンテナを開発した。同社の伸縮するフレキシブル基板「伸縮FPC」をベースとしているため、手首などの関節部に貼り付け、曲げた状態でもNFC(近距離無線通信)アンテナとして機能する。

本開発品の特徴 

 このコイルアンテナは、日本メクトロンが量産している伸縮FPCの技術をベースとしながら、伸縮素材層の厚みを50μmから10μmと従来の1/5に薄型化。補強構造を開発し、柔らかさと製品形状の保持を両立したことで、シワにも追従でき、自然な装着感を実現した。

 また、従来のコネクタ接続に加えて、小型の導電性スナップボタンを組み込むことにより、簡単かつ確実にコイルアンテナと外部機器を接続することを可能にした(写真1、2)。

本研究開発成果と今後の展望 

 このコイルアンテナを手首に貼り付けた後、導電性スナップボタンを介して外部機器となるセンサー基板や無線デバイスと接続することにより、センサー駆動およびセンサー取得データのワイヤレス伝送が可能になる。これにより、本研究開発「柔軟伸縮素材を伝送媒体とする接触・非接触併用型二次元通信」の目標の一つであった、非接触給電という条件下で、当コイルアンテナがNFCアンテナとして機能することが確認された(写真3)。

 実際に手首の動きによって、コイルアンテナが大きく変形し、たわんだ状態でもNFC機能が得られたことは、当非接触給電分野において大きな成果(写真4)。

 今回は、温度センサー(南山大学による製作・提供)を用途例としているが、NFCアンテナ、およびそれによって得られる給電特性の範囲で、外部機器への換装が可能。また人体だけではなく、衣類、寝具やソファ、ぬいぐるみなどに組み込みが可能なバッテリーレスのIoTセンサーとして、幅広い分野への応用が期待できる。同社では、技術を通じて社会に貢献することを目標に、SCOPEでの研究開発で得た技術と知見に基づいた伸縮FPCの一層の機能向上とニーズ探索を行い、製品開発をしていく方針。

◇総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)とは

 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE、Strategic Information and Communications R&D Promotion Programme)とは、情報通信技術分野の研究開発において、新規性に富む研究開発課題を大学・独立行政法人・企業・地方自治体の研究機関などから広く公募し、外部有識者による選考評価の上、研究を委託する競争的資金のことを指す。

 南山大学理工学部機械電子制御工学科の野田准教授の研究である「柔軟伸縮素材を伝送媒体とする接触・非接触併用型二次元通信の研究開発」が、2020年度SCOPE(電波有効利用促進型研究開発(先進的電波有効利用型)フェーズⅡ)に採択された。

 その共同研究者として、法政大学理工学部電気電子工学科の中村准教授、日本メクトロンが参画している。

【総務省SCOPE(受付番号:205006003)】

<資料提供:日本メクトロン>