2021.04.28 「泊まれる太陽光発電所」、本格オープン森林に溶け込む再エネ、新電力ループ

自然に溶け込んだようにある太陽光発電所兼宿泊施設

上空から撮影した宿泊施設上空から撮影した宿泊施設

周囲は森林に囲まれている周囲は森林に囲まれている

デザイン面でも高い評価を受けているデザイン面でも高い評価を受けている

「木漏れ日」を浴びながら農業体験などができる「木漏れ日」を浴びながら農業体験などができる

 泊まれる太陽光発電所-。そんなキャッチフレーズの宿泊施設が4月、栃木県那須町に本格オープンした。再生可能エネルギー系の新電力、Looop(ループ、東京都台東区)が所有するコテージ風の施設で、屋根上などの全発電量は一般家庭の約55世帯相当分を賄える。「自然と共生」をテーマに、森に溶け込んだようなデザインにもこだわり、世界的にもユニークな施設だという。

 那須塩原市街地から車で1時間弱。ひっそりとした森林の中に、宿泊施設「Looop Resort NASU(ループ・リゾート那須)」はある。19年5月に完成。樹木の伐採を抑えるため、最小限とした敷地は約7700平方メートル。「建設時に木々を傷つけないよう、資材をクレーンで搬入した」(ループ広報課)という念の入れようだ。

 2階建てと3階建ての4棟が並ぶ。宿泊棟2棟のほかは、キッチンなどがある共用棟と浴場がある温泉棟だ。2棟にそれぞれ最大4人ずつ計8人が宿泊可能。通信環境や机などもそろい、休暇と仕事を掛け合わせたワーケーションとしての活用も提案していく。

 施設は、ループが社内の研修用や保養所として開設。一般客にも開放することになり、冬季は積雪で閉鎖されるため、4月から本格的な営業を始めた。「自然エネルギーを身近に感じてもらう」(同)狙いだった。

 あくまでも発電施設。同社は、発電のシミュレーションを繰り返して、屋根の高さや方角、傾きなどを配慮して、発電効率を最大にしている。

 高い建物の片流れの屋根は南を向き、太陽光パネルが並ぶ。ほかにも、敷地内の架台にパネルが敷き詰められ、出力合計は204kW。年間発電量は22万2000kWhに達する。電力は再エネ固定価格買い取り制度(FIT)で売電しているが、将来的には、自家消費して地産地消していく考えだ。

木漏れ日をイメージ

 森に囲まれた施設には、雨水を循環させている棚田状のビオトープなども備わり、自然観察やアウトドア、農業体験などが楽しめる。

 こだわりの一つは、施設内の全ての太陽光パネルに、日光を透過する半透明型を導入している点。屋根の軒下や、高さ約2メートルの架台のパネル下は、「木々の間から日差しが漏れる木漏れ日のようなイメージ」(同)となり、自然と一体になった心地よさを味わえる。

 ループは、電力小売り事業で電気自動車(EV)ユーザー向けのサービスを拡充している。同施設でも、世界での新車販売を全てEVなどに切り替えると表明したホンダと協力。4月下旬には、報道メディア向けにEVのバッテリを活用してバーベキューをしたり、施設に給電する体験などを公開したりするイベントも実施した。今後、そうした体験メニューを宿泊客に提供していくことも検討していく。

 施設では、壁面に木材をあえて露出させるなどしたデザインを徹底。従来の発電所のイメージを覆す工夫が随所に盛り込まれており、2020年度日本空間デザイン賞のサービス・ホスピタリティー部門で銀賞を受賞した。

 ループ広報課は「太陽光発電はカーボンニュートラル社会には欠かせない。とはいえ、景観を気にする声もある。当社が新しいタイプの発電所を提案し、自然エネルギーの普及につなげていきたい」と話している。