2021.06.18 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<46>地域課題解決型ローカル5Gビジネスモデル④
ローカル5Gを利用した地域課題解決型ビジネスモデルには、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)を推進する新たな「B2B2X」というモデルがある。
「to」を「2」に置き換えることが多く、「B」はビジネス(企業や団体などの事業者)の頭文字になるため、「ビジネス to ビジネス to X」、つまり「企業対企業対X」という意味なのだが、では「X」は何を指すのだろうか。
「X」には、ビジネス(ユーザー企業)、あるいはカスタマー(顧客)/コンシューマー(一般消費者)のいずれかが入る。トランプのワイルドカードみたいなものだ。
この「B2B2X」は覚えやすい半面、分かりにくい。そこで、少し解説してみよう。
地域の通信事業者
まず、一つ目のBは「地域の通信事業者」のこと。全国津々浦々まで通信ネットワークを張り巡らす全国キャリアではなく、地域の光回線を保有するFTTH事業者(光固定通信事業者)や、CATV(ケーブルテレビ)事業者、FWA(固定無線アクセスシステム)事業者などだ。
具体的には、ローカル5Gの免許主体となり、道路沿いの電柱などに「サブ6」や「ミリ波」の基地局アンテナを設置し、ビル内のオフィスをはじめ、工場、集合住宅、戸建住宅など、中小企業や個人商店、加入者向けに「ローカル5Gサービス」を提供する事業者を指す。
次に、二つ目のBだが、これは前回紹介した地域産業の変革で重要な存在となる「地域の業種別サービス提供者」を指す。語列の中央に位置することや、課題解決型ビジネスモデルのメインプレーヤー(主役)であることから、「センターB」とも呼ばれる。一言でいえば、ある業種に特化した現場に精通し、DXによる課題解決を支援するスペシャリストだ。例えば、地場産業には金属加工業、木工業、農産加工業、酒造業などがある。
話を簡単にするため、これらの業種が横丁の並び(水平方向)のようにそれぞれ業種別ビルとして並立しているとしよう。そして、同じ業種の競合する中小企業がそれぞれのビルの異なる階に入っているとする。
そこで、顧客管理や会計など、業種が異なっても共通な業務サービスを提供するのが、ビルの並びに横串を刺したイメージの「ホリゾンタル(水平)SaaS(ソフトサービス)事業者」だ。
対してビジネスでは競合するものの、同じ業種の場合には共通する課題も多い。そこで、業種特有の課題解決サービスを提供するのが、「バーティカル(垂直)SaaS事業者」と呼ばれる存在がある。
こちらは、業種別のビルに縦串を刺したイメージとなる。つまり、このバーティカルSaaS事業者が、地域課題解決型ビジネスモデルにおける「地域の業種別サービス提供者」の主たる実体となるわけだ。
DXは一挙に進む
今後、ローカル5Gをベースに4K/8Kや仮想現実(VR)/拡張現実(AR)、IoT、人工知能(AI)などを活用した、魅力ある課題解決型のアプリケーションサービスを開発・提供する「センターB」が各業界に続々と登場すれば、地域のDXは一挙に進むだろう。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉