2021.06.24 【備えるー水害からの教訓】〈4〉防ぐ通信、センシング生かす 防災減災に取り組む企業

モニターから樋門を遠隔操作するアドバンテックテクノロジーズの管理システム(=同社提供)

モニターから樋門を遠隔操作するアドバンテックテクノロジーズの管理システム(=同社提供)モニターから樋門を遠隔操作するアドバンテックテクノロジーズの管理システム(=同社提供)

 2017年の九州北部豪雨、18年の西日本豪雨、20年の令和2年7月豪雨と水害が常態化している九州では、地元企業などが通信、センシングなど強みとする技術を生かして防災・減災への取り組みとシステム開発を進めている。

コロナ禍への対応も

 IoTソリューションのアドバンテックテクノロジーズ(福岡県直方市)は、同市や福岡大学と共同で遠賀川(一級河川)流域の樋門(ひもん)の遠隔管理システムの開発を進めている。

 樋門は、河川の水位が上昇した際に水路への逆流を防ぎ、浸水を抑える役割がある。システムは管理センターから樋門の開閉や状態確認を行う仕組みで、樋門管理者の高齢化や施設老朽化など課題解決に資すると期待される。

 3月にフィールドテストを実施。7月からは長期運用と稼働テストを行う。将来は第5世代移動通信規格5Gによるリアルタイム通信や、人工知能(AI)による河川の分析も取り入れる。

 コロナ感染対策で避難所での密の回避は、各自治体にとって頭の痛い問題だ。

 飲食店内の空き状況の配信サービスなどを手掛けるバカン(東京都千代田区)は、長崎県大村市や宮崎県日南市など77自治体と協定を結び(3月末現在)、住民に避難所の混雑状況を配信している。

 同社のリアルタイム空き情報配信プラットフォームを通じて、スマートフォンなどで避難所の位置や混み具合を事前に確認できる。

浸水箇所を検知

 センサーの亀岡電子(京都府亀岡市)が開発したセルラー通信式浸水検知センサーは、LINEのプッシュ通知で浸水を伝え、アプリ上で場所を確認できる。電子部品商社の創ネット(福岡市博多区)が販売店契約を結び、自治体や自治会、企業、一般への普及を図る。

 市販の電池や4G ネットワークを使用し、電源やネットワーク工事が不要なため低コストで設置できる。災害時の初動対応や見回りの人員不足が懸念される中、センサーを多くの箇所に設置することで負担軽減を目指す。

 エリアトーク(鹿児島県霧島市)が提供する無線システムは、地域コミュニティーの情報伝達を後押しする。公民館などに放送設備を設置することで、防災行政無線に自治会からの地域情報を加え、各家庭に置かれた端末などから伝達する。

 設置や保守作業が有線に比べ手軽に行える点も強み。西日本を中心に普及を進め、避難所の遠隔開錠システムも商品化している。

通信網などを強化

 通信事業者の取り組みも進む。

 NTTドコモ九州支社(福岡市中央区)は災害の激甚化に伴い、応急復旧でも快適な通信環境を確保するため、コンテナ基地局や5G移動基地局車の使用を検証している。

 3月には宮崎県立宮崎海洋高等学校(宮崎市)と協定を締結。実習船を船上基地局として活用し、地上基地局が被災した沿岸部をカバーする。

 日本郵便沖縄支社との連携では、沖縄県内の郵便局に災害対応充電器を配備するなど避難所支援も行っている。今月からは、登録した地域の災害避難情報をSMSで通知するサービスも開始した。(つづく)