2021.06.29 パナソニックスマートファクトリーソリューションズの事業戦略製造業のプロセス革新へ
プロセス革新の例(パナソニック モバイルソリューションズ事業部 神戸工場の実装ライン)
回路形成プロセス、熱加工システムグローバル展開
パナソニックスマートファクトリーソリューションズ(秋山昭博社長)は、回路形成プロセス(電子部品実装機、半導体製造装置、ディスプレー製造装置、ソフトウエア)、熱加工システム(溶接機、溶接ロボット、レーザー加工)のグローバル2事業を核に、製造業のプロセス革新を推進している。
同社はパナソニックコネクティッドソリューションズ社プロセスオートメーション事業部傘下にあり、秋山社長はプロセスオートメーション事業部長を兼務する。プロセスオートメーション事業関連でグローバル生産8、サービス70、販売75、トレーニングセンター28拠点を擁する。
秋山社長は「業界環境は新型コロナウイルス、米中貿易摩擦、半導体不足、自然災害などリスク要因がある一方で、デジタル化の加速に伴う半導体・デバイス需要の拡大、EV化・自動運転、5Gの普及、投資が期待される自動車・建機・造船分野など成長のチャンスも多い。製造業の現場でもこうした成長分野を取り込むための製造プロセスの革新が求められ、同時に作業者不足や高品質生産のための自動化要求も高まっている」と現状を分析する。
同社が目指すのは製造現場のプロセスイノベーションであり、エッジデバイスである競争力の高い設備や装置をベースに、それら装置をつなぐことで生産ライン、工場全体の最適化を図り、MESからさらに上位のSCP/ERPまでの価値を提供しようというもの。一気に全体を最適化するのではなく、段階的に顧客の最小の投資により最適化を図ることで顧客との継続的なビジネスの実現を目指している。
秋山社長は「システムとエッジ設備でAutonomous Factory(ファインプロセスコントロールで価値を創り続ける工場)の実現を目指している。そのためにも基本となる実装プロセス、FPDプロセス、半導体プロセス、溶接システム、DDL、製造ソリューションの6分野で世界ナンバーワンのエッジ設備を提供したい」と話す。
エッジ設備の強化は、設備単体だけではなく、拡張機能やファインプロセスを入れ込んだ設備とする。実装機では高密度基板の微細実装に対応する「NPM」シリーズで基本性能の強化やラインアップを拡充し、合わせて統合生産管理ソフト「PanaCIM」をベースに、IoT/M2Mを活用した統合ライン管理システム「iLNB」によるファインプロセスコントロールを提唱する。同システムの活用により自動機種切り替え、良品生産・品質予兆管理、タクトバランス最適化・工程ボトルネック解消、ラインKPI(良品率・総合稼働率)管理などが可能になる。他社との協業も積極的に推進し、基板検査機メーカーなどグローバルで現在102社と連携する。協業により設備やシステムを補完するだけではなく、新たな製造プロセスを開発することも目的としている。
溶接システムでは溶接ロボットの情報を収集、蓄積、分析することで生産性や品質を向上し、トレーサビリティーの強化を実現する統合溶接管理システム「iWNB」を昨年8月から市場に投入している。いわばiLNBの溶接ロボット版で、同社溶接ロボットの情報を収集、蓄積、分析することで溶接現場のさらなる生産性向上と効率化を実現する。溶接ロボットに、リンクウィズ社との協業による検査ソリューション「Bead Eye」も加えて、プロセス全体のデータ化・見える化を推進している。
また同社指定のVR機器を使用して、溶接技術者の動作をロボットで再現する業界初の「VRPS」を市場に投入している。これまで専門性が必要とされたロボットティーチング作業が簡単にでき、ロボットの高稼働率、高生産性を実現する。
こうした製造業のプロセス革新を推進するためにも企業として収益性の高い持続的な成長を続けることが重要であり、競争力の源泉である市場・顧客、製品・サービス、業務プロセス、IT・設備などを支える人材の強化にも取り組んでいる。
秋山社長は、松下幸之助創業者の言葉「商売とは『感動』を与えることである」を引用し、「商売の原点に戻り、私たちの得る以上の利益を顧客に提供するカスタマーサクセスの思想で、価値を提供し続けたい」と述べ、今年度のスローガンとして「感動を届ける」を掲げている。
なお同社は22年4月のパナソニックの持ち株会社制移行に伴い、コネクティッドソリューションズ社4法人統合により発足する新会社「パナソニックコネクト」傘下の1事業部門(プロセスオートメーション事業部)となる。