2021.07.09 【家電流通総合特集】21後半戦 わが社の家電流通戦略三菱電機住環境システムズ

福家 取締役福家 取締役

住設機器と家電販売両輪 「ターゲット30」を推進、無駄なく適切な接客

 三菱電機住環境システムズは、住設機器と家電販売の両輪で業務に当たっていく。企画室長の福家好夫取締役は「昨年、特に家電事業は大きく伸びたように思えるが、2~3年のスパンで見るとそうでもない。目の前の取り組みはもちろん大切だが、広い視野で取り組む」と話す。

 2020年度を振り返り、「ここまで新型コロナウイルスの影響が続くとは思っていなかった。予想外」と福家取締役。

 同社の19年度の業績は公立の学校空調などが追い風となり好調だった。福家取締役は「19年度の反動と新型コロナの影響が大きい。当初見越していたものが中止や延期となり、設備投資が大きく減少したことと、対面が中心だった営業においてマイナスだった」と話す。

 一方で、コロナ禍で、空気質への関心が高まり、換気関連製品の動きが活発になった。また、エコキュートの買い替え需要が顕在化。特別定額給付金も後押しとなり、これらの商材は前年比2桁伸長となった。

 特別定額給付金の影響は大きく、「7月以降、大型冷蔵庫など、家電製品の大型が伸びた」と福家取締役。家電の主力製品は19年度並みの高水準となった。

 家電製品の売り上げに大きく関わるのが、全国に1400店ほどある系列の地域電器店「三菱電機ストア」。コロナ禍で合展が軒並み中止となり、個展もこれまでと同様とはいかず、もどかしい期間が続いている。福家取締役は「三菱電機ストアにとっては、苦しい状態ではあるが、最低限の顧客対応は続けられた。できることは精いっぱいやった」と話す。新たな販促方法として、オンラインを取り入れるなど、試行錯誤を続けてきた。

 今夏については、「コロナ禍で変化した方法により慣れていく。合展が引き続きできない状況のため、個展など、個の集合で支えていく」と福家取締役。昨年から続くコロナ禍で得た経験を糧に、全店舗で取り組みを強化し、前年並みを目指していく。

 福家取締役は今後の状況次第と前置きをした上で「ワクチン接種が進み、状況が好転すれば冬以降、合展が再開できる可能性もある」とした。

 独自施策「ターゲット30」も引き続き推進していく。Aランクの顧客を3割は常に維持しながら、データベースを活用した顧客訪問の徹底・強化を目指す。ターゲット30を進めることで、より顧客の深掘りが可能となり、適切な接客が無駄なくできる。

 福家取締役は家電製品の販売に期待を寄せ、「コロナ禍においても、地域へ根付き、2世を育てている三菱電機ストアは、活性化している。そんな店舗が各エリアに存在し、核となっている」と話した。

 系列店政策の軸となるAOC(エリアオーナーズチェーン)については、「組織として安定した規模で活動しており、その成果は数字にも表れている」と福家取締役。「暮らしと設備の総合展」の代わりとして、昨年から開催しているオンライン展示会の活動も引き続き注力する。重要施策の一つとして、改良を加えながら工夫した取り組みを続けていく。

 働き方改革にも積極的で、業務の無駄を減らすことと効率化を図ることを軸にする。福家取締役は、「業務の緊急度と重要度を分けて考えて行動する。それがお客さまにとっても無駄のない動きになる」と考える。働きやすい環境を合わせて考えることで、生き生きと活動でき、さらなる活性化へとつなげていく。

機能説明の短い動画を作成 チラシにQRコード ウェブ販促さらに強化

 顧客の多様化が進み、接客も一辺倒ではいかなくなった。製品の理解を深めることも必要不可欠だ。福家取締役は「顧客の好みの記録を生かせるよう、接客時には全ての機能を説明するのではなく、その顧客に一番刺さるポイントを伝える必要がある」と話す。

 一方で、「毎回細かく説明をしなくても、『快適』であることが明確に伝わる付加価値のある製品であることも大切」と福家取締役。

 広く製品をアピールするテレビCMに加え、販売員が製品を理解するための1分間ほどの短い動画を、機能ごとに作成する。また、チラシにQRコードを掲載し、製品説明の動画へ案内する仕組みを確立すべく、テストを繰り返している。福家取締役は「ウェブ販促は今後さらに進化する。力を入れて取り組む」と先を見据えた。

 テレワークが進むことで、オフィスの必要性が見直され、オフィスの新設にブレーキがかかることも予想される。福家取締役は「エリアによって流れは二極化している。ホテルの需要も、東京オリンピック・パラリンピックについては一巡したと思う。今後は大阪・関西万博がどうなっていくか注視する」と話す。

 今後は不透明なことも多いが、「エアコンは寒冷地用の製品『ズバ暖』も人気があり、手堅く推移すると予想している。エコキュートやIHクッキングヒーターの買い替えサイクルもある」と福家取締役。顧客管理の徹底や顧客巡回活動など、三菱電機ストアの得意を伸ばす取り組みにも力を入れ、底上げを目指す方針だ。