2021.07.09 【5Gがくる】<49>ドイツに見るデジタル化と5G化のヒント ①

 「ドイツ村」と称されるテーマパークは国内にいくつかあるが、その中でもドイツとの心温まる交流を感じさせられるのが沖縄県宮古島にある「うえのドイツ文化村」だ。宮古島とドイツにどのような関係があるのか、と思う人も多いと思うが、両者をひも付けるエピソードがあった。

 それは明治6年7月にさかのぼる。ドイツの商船「ロベルトソン号」は貿易品の「茶」を積み、中国福州からオーストラリアのアデレードに向けて出港した。ところが南風が強いため、台湾の南を通過して太平洋に出る航路から台湾と宮古島の間を通る航路へ変更したのだが台風に遭遇。暴風でマストを失ったロベルトソン号は8人の乗組員を乗せたまま漂流を続け、宮古島の南岸、現在の上野の沖合で座礁した。これを発見した島民が、台風による荒波にもかかわらず小舟をこいで救出を試み、乗組員全員を無事救出したという実話だ。

 筆者も、うえのドイツ文化村を訪れたことがあるが、島民の博愛精神とともに、世界を駆け巡っているドイツの商魂たくましい姿は今も変わらないと、座礁した辺りのサンゴ礁を見ながら思いにふけたことがある。

どの業種にも共通 

 さて、前回まではローカル5Gビジネスモデルとして、ビジネス変革をゴールとしたデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)戦略の練り方について、地場産業を例に挙げて見てきた。もちろんこれは地場産業だけの話ではない。あらゆる産業の現場において、業種固有技術の継承課題を5GやIoT、人工知能(AI)などのデジタル技術を活用して解決する新たな試みが行われているわけだ。しかし、こうした課題は業種固有のものだけではなく、どの業種にも共通なものもある。

 その最たるものが「基幹業務」の課題だろう。基幹業務とは購買管理、生産管理、在庫管理、販売管理、会計管理、人事管理など、組織の屋台骨を支える管理業務のことだ。

 従来はこれらの管理業務が統合されておらず、部門ごとにシステム化されていることが多かった。同じグループ企業であっても、会社や部門によって扱う情報や処理方法が違い、個々の帳票フォーマットやデータベースで処理されるケースも少なくなかった。

 実際に会社や部門間でデータを受け渡して個々のシステムへ反映させるなど、データ連携に余計な手間をかけている企業も多い。さらに、人手不足やコロナ禍、構造改革による会社や部門間のリソースシフトの際、システムの違いによる操作性や利便性に起因した生産性の低下を招くケースも出てきている。

「ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)」と呼ぶ統合基幹業務システムを導入したビジネス変革

ドイツのSAP社 

 この課題を解決していくためにこれまで大企業を中心に「ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)」と呼ぶ統合基幹業務システムを導入したビジネス変革を進めてきている。基幹業務システムは国内外のさまざまなソフト企業が開発しているが、ERPを世に広め今も世界トップを走っているのがドイツのSAP社だ。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉