2021.07.16 【電子部品技術総合特集】ハイテクフォーカス・ニチコン

チップ形導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「GYEシリーズ」チップ形導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「GYEシリーズ」

チップ形アルミ電解コンデンサー「UCHシリーズ」チップ形アルミ電解コンデンサー「UCHシリーズ」

チップ形アルミ電解コンデンサー「UYAシリーズ」チップ形アルミ電解コンデンサー「UYAシリーズ」

情報通信機器向けチップ形アルミ電解コンデンサーの最新技術動向

小型化、高温度・長寿命に対応

 第5世代移動通信システム5Gは、高速大容量、高信頼・低遅延通信、多数同時接続の特長を生かして、自動運転の普及や遠隔医療の実現といった社会課題の解決につながることが期待されている。

 しかし、現状では5Gの通信サービスエリアが十分に普及していないという問題がある。電波特性から一つの基地局でカバーできるエリアが狭い5Gでは、4Gと比較して多くの基地局設置が必要であり、今後のエリア拡大においてはメンテナンスが難しい場所や温度・湿度面で厳しい環境への設置も想定される。

 このような背景から、5G基地局にはセット機器の小型化や、過酷な設置環境におけるメンテナンスフリーが要求され、使用される部品にも同様に小型化や高温度・長寿命対応が求められる。これらニーズに対応した導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー、チップ形アルミ電解コンデンサーの最新技術動向について解説する。

 ■125度保証導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「GYEシリーズ」

 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは、導電性高分子と電解液の2種類の電解質を採用することで、アルミ電解コンデンサーに比べて低抵抗化、高リプル化、長寿命化が可能であり、自動車のエンジンルーム周辺など過酷環境で使用される電子機器への採用が拡大。5G基地局においても先ほど述べた課題対策として導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーの採用が広がっている。

 当社では導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーの「GYAシリーズ」を上市以降、製品ラインアップの拡充を図ってきたが、今回、さらなる高容量と高リプルに対応した125度保証「GYEシリーズ」を開発した。

 本製品はこれまで培ってきた技術を結集し、高容量陽極箔を採用したほか、導電性高分子材料、電解液を最適化。これにより、GYAシリーズに比べて同一ケースサイズで1ランク高容量化するとともに、許容リプル電流値は約1・2倍となっており、セット機器の省スペース化や高性能化に寄与することが可能である。

 GYAシリーズとのスペックの比較を【表1】に示す。

 ■125度低温ESR規定品チップ形アルミ電解コンデンサー「UCHシリーズ」

 アルミ電解コンデンサーは情報通信機器や産業用機器、車載機器など幅広い領域で採用されており、高容量に加え、長寿命、高耐電圧、低抵抗、高信頼性など用途に合わせた最適な製品をラインアップしている。

 情報通信機器はセット機器の高密度実装や高性能化に伴って、48V電源系などに使用される中耐電圧領域(50~80V)の高容量化、高性能化に対するニーズが増加。そこで、当社は中耐電圧領域の高容量化を進め、25~35V定格にラインアップしていた「UCHシリーズ」の定格拡充を行った。

 本製品は、これまで当社が培ってきた高容量化技術を駆使しており、電極箔の高容量化と素子構成部材の薄手化により電極箔収容面積を拡大した。

 現行の「UCZシリーズ」から1ランク高容量化を達成するとともに、新開発電解液の採用による安定特性を実現。UCHシリーズの定格拡充で、用途を問わず要望が多いセット機器の小型化、軽量化、員数削減、高性能化に貢献できる。

 同一サイズでの最大収容容量と許容リプル電流値の比較を【表2】に示す。

 ■125度5000時間保証チップ形アルミ電解コンデンサー「UYAシリーズ」

 アルミ電解コンデンサーは内部に電解液を用いており、経年使用に伴って電解液が徐々に蒸散し、静電容量などの特性低下が生じる。やがて一定以上の電解液が蒸散すると静電容量の減少や、損失が保証値を超えて寿命に至る。

 このようにアルミ電解コンデンサーの寿命は電解液の蒸散量と相関があることから、長寿命化の方策として①電解液量の最適化②電解液の蒸散抑制が考えられるが、①はコンデンサーのケースサイズが決まっている以上、限界値がある。

 そのため、②の電解液の蒸散を抑える方法で、高温度、高寿命の125度5000時間保証「UYAシリーズ」を実現した。電解液に低蒸散性溶媒を適用し、従来品では3000時間であった保証寿命をおよそ1・7倍まで長寿命化させた。また、製品内部仕様の最適化による製品内空隙の確保、座板形状の最適化によって良好なはんだ付け性も実現している。

 UYAシリーズの仕様を【表3】に示す。

 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーのGYEシリーズ、アルミ電解コンデンサーのUCHシリーズおよびUYAシリーズの市場投入により、5G基地局の小型化、メンテナンスフリーに寄与できると考えている。

 当社は市場ニーズに対応した技術革新をさらに進め、今後もさまざまな社会課題の解決に貢献していく。

 〈筆者=ニチコン〉