2021.08.06 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<52>ドイツに見るデジタル化と5G化のヒント④

 デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)を推進するには、組織によって異なるデータ処理を標準化する必要があり、それには組織から独立しデジタル化を支援するプラットフォームが有効であることを、前回、ドイツの「プラットフォーム インダストリー4.0」から学んだ。

 クラウド型のERP(統合基幹業務システム)もその一つだ。モバイルブロードバンドさえあれば、あらゆる現場においてタブレットやスマートフォンなどから利用できるので、紙の伝票や個々のエクセルの表などを使うことなく、データベースを統合できるメリットがある。

新たな価値も創造

 しかも、データ解析や人工知能(AI)を利用した予測システムと連携させることにより、製造業におけるサプライチェーンの最適化など新たな価値も創造できるようになる。

 コロナ禍で社会環境が急激に変化し、市場の動きに一刻でも早く対応できるサプライチェーン管理が求められている昨今、これは大きな魅力となりそうだ。

 さて、このように「インダストリー4.0」を掲げ、世界でDXをリードしているドイツではあるが、ドイツ国内に目を向けると、意外にもデジタル化が進んでいない。灯台下暗しというわけだ。

 EU(欧州連合)の欧州委員会が発表しているデジタル経済社会指標「DESI2020」によると、ドイツの総合的なデジタル競争力はEU加盟国の中で12位にとどまっている。特に「デジタル公共サービス」や「デジタル技術の利用」での遅れに加え、「専門的なデジタル人材の不足」が指摘されている。日本と同じだ。その理由はどこにあるのだろうか?

 DESI2020によると、ドイツはトライアル(実証実験)など、第5世代移動通信規格5G化の準備ではEUをリードしていながら5G社会を実現するために必要となる光ファイバー網のカバー率では21位と大きく遅れている。つまり、5G化に不可欠な光回線の普及が進んでいないのが現状のようだ。

 現在、ドイツの私企業全体の99.5%を「ミッテルシュタント」と呼ばれる中小企業が占めており、ドイツ国土全体に広く分布している。

メタル回線に接続

 そのため、工場に超高速(eMBB)のローカル5Gを導入し、デジタル化した膨大なデータをクラウドで活用したいと思っても、地域に超高速な光回線が敷設されていない。

 そのため、やむを得ず、5Gを既設のメタル回線に接続することになるわけだが、折角の超高速な速度が落ちてしまうため、うまくデータ活用ができない、というジレンマに陥ってしまう。どの地域でも光回線の普及が進んでいる日本からみれば、何とも言えない皮肉な話だ。

メタル回線では5Gの超高速性を活用できない

 また、ドイツでは大企業との格差が大きく広がり、中小企業では前述したプラットフォームがあまり利用されておらず、専門的なデジタル人材が不足しているとも聞く。

 これらを反面教師としてわれわれは何を学ぶべきか?(つづく)

 〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉