2021.09.08 【石油暖房機特集】各社、新モデル発売相次ぐ在宅時間増で需要拡大

石油ファンヒーターも「ニューノーマル」対応が進み始めている

コロナはアウトドア企業とコラボした石油ストーブを開発コロナはアウトドア企業とコラボした石油ストーブを開発

 暖房機器メーカー各社から新モデルの発売が相次いでいる。暑さの厳しい夏場から冬に向けた「仕込み」は本格化しており、新型コロナウイルス感染拡大が長期化する中、今冬も在宅時間が増え、暖房機器の重要性はさらに高まりそうだ。暖房能力の高い石油ファンヒーターをはじめ、アウトドアシーンでの活用など石油ストーブの価値も見直されている。おうち時間を快適に過ごす選択肢の一つとして、石油暖房が存在感を増している。

 家庭向け石油暖房機器の主力である石油ファンヒーターは、2019年度に暖冬に苦しみ、前年比2割近い落ち込みを記録した。18年度も2桁以上の前年割れであり、厳しい状況が続いていたが、昨年度は寒波の到来で需要が反転。前年から約2割伸びて約187万台にまで回復した。

 新型コロナの急拡大で在宅勤務を余儀なくされ、初めて迎えた昨冬。在宅での業務中、冷えやすい足元を暖める暖房機器として石油ファンヒーターにも注目が集まった。寒波到来による需要押し上げ効果が大きかったとはいえ、在宅勤務の広がりが石油ファンヒーターの導入を後押ししたともみられている。

 一方、石油ストーブも19年度には暖冬の影響を受けているが、通電しなくても使えるため、防災用としても底堅い需要があるのが特徴だ。さらに20年度は寒波の影響だけでなく、新型コロナ下で盛り上がっている「アウトドア熱」の追い風も受けている。コロナの「SLシリーズ」や、トヨトミの「GEAR MISSION(ギアミッション)」シリーズなどで、レトロなデザインと相まって対流型ストーブの人気が高まっている。

 そうしたトレンドをつかもうとメーカーも販売戦略を強化している。コロナは、同じ新潟県三条市に本社を置く、アウトドア用品を展開するキャプテンスタッグとコラボした対流型石油ストーブと石油こんろを製品化。キャプテンスタッグのオンラインストアで、限定300台で発売した。トヨトミもギアミッションシリーズの新モデル発売と合わせてプレゼントキャンペーンを実施するなど、アウトドアシーンでの訴求に力を入れている。

 石油ファンヒーターや石油ストーブは、専業メーカーが強みを発揮する分野だ。コロナやトヨトミ、ダイニチ工業などが製品開発でしのぎを削っている。製品として成熟していることもあって大幅な技術革新は起きにくいが、北海道や東北などといった寒冷地を中心に需要は根強い。

 特に石油ファンヒーターは、近年エアコンとの併用が提案されている。エアコンは足元暖房に弱いため、それを補う暖房機器として、素早い立ち上がりも特徴の石油ファンヒーターを有効活用しようというものだ。

 トヨトミは、電気ヒーターとの「ハイブリッド式」を提案し、電源を入れてから3秒で電気温風を吹き出すことができる。コロナも新モデルで、通常の点火時間を10秒から30秒短縮しており、寒さの厳しい早朝などでも快適に使えるような技術開発を進めている。

 日本ガス石油機器工業会によると、今年度は石油ファンヒーターで約183万台、石油ストーブで約90万台の出荷規模を予測している。昨年度に両製品とも出荷が伸びたため、今年度は保守的に見た形だ。

 ただ、天候に左右されやすい製品のため、寒波や暖冬で需要は大きく変わる。予測は難しく、年末ごろが需要のピークになる傾向はあるものの、週を追うごとに状況は変わっていくのが毎年、市場が見せる光景だ。

 今年度は、コロナ下で迎える本格的な冬の2年目。在宅勤務やおうち時間の過ごし方などに対する慣れや自宅の整備もある程度進んでいる。しかし、そうした世帯はまだ一部で、新しい生活スタイルへの対応を目指した家庭内の整備はまだ続いている。その需要をどう捉えるかも、メーカーにとっては成長の鍵を握っている。

新しい日常を意識

 コロナが換気後、下がった室温を素早く回復できるよう最大暖房出力を一時的に高められる新機能を石油ファンヒーターに搭載するなど、ニューノーマル(新しい日常)を意識した開発も進んでいる。

 成熟した市場だが、ライフスタイルの変化に合わせた製品改良のニーズが広がっている上、アウトドア人気もあり、石油ストーブもこれまでとは異なる需要構造に変化する可能性がある。今冬もコロナ下での生活が予想されるため、さらなる需要の変化を敏感に捉え、製品提案や開発にも生かしていくことが求められる。