2021.09.14 【コンデンサー特集】自動車・産機向けなど好調MLCC技術開発が加速

世界初0603サイズ・最大静電容量1.0μF自動車向けMLCC

長寿命150度対応低ESRチップアルミ電解コンデンサー長寿命150度対応低ESRチップアルミ電解コンデンサー

 コンデンサー市場は昨年夏以降、市況が回復。コロナ禍でのサプライチェーンの変化も加わり、旺盛な需要に対し、生産に追われる状況が続いている。

 2022年3月期第1四半期(21年4~6月)連結決算でもコンデンサー各社は、大幅増収増益となり、過去最高の売り上げ、利益を上げた企業、収益改善が進み、黒字転換したところもある。

巣ごもりで需要増

 新型コロナ感染症拡大対策としてテレワーク、自宅待機が増え、巣ごもりによるパソコン(PC)およびその周辺機器、テレビ、エアコン、白物家電、調理家電、ゲーム機などが売れ、コンデンサー需要を引き上げた。スマートフォン向けは春以降に中国ローカルメーカーで生産調整の動きが見られたが、好調な北米メーカー向けなどが市場を押し上げ、堅調な受注が続いている。第5世代移動通信規格5G基地局、データセンター関連需要も底堅い。

 電子化が進む自動車向けは、昨年後半から市況が好転。深刻な半導体不足から減産する工場が相次いでいるものの、コンデンサーは先行手配による在庫積み増し需要が続き、好調な受注が継続している。昨年末から需要が反転した産業機器/製造設備向けも想定以上の需要増への対応に追われている。カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギー向け需要も増えている。

 7、8月のコンデンサー需要も好調に推移。9月に入っても大きな変化は見られない。ただ、ここにきて中国ローカルの家電メーカーで前倒し発注を抑える動きが出ているほか中華圏スマホメーカーの過剰発注分の一時的な調整を懸念する見方もある。新型コロナ感染症拡大の影響や10月の中国国慶節、クリスマス前後の市場動向がコンデンサー業界でも注目されている。

 一方、機器、装置の高機能化、多機能化、自動車の電子化の進展のギアは上がっている。セラミック、アルミ電解、タンタル、フィルム、電気二重層など各種コンデンサーにおいても小型・薄型化、高容量化、高耐熱化、高耐圧化、高信頼性、長寿命化、低抵抗化、低損失化、耐振性の開発、製品化は加速。新製品の市場投入が相次いでいる。

 コンデンサー世界市場の約9割(数量ベース)を占めるセラミックコンデンサーは、その約9割を担うチップ積層セラミックコンデンサー(MLCC)の技術開発、製品化が目覚ましい。セラミック、電極材料の微粒化、均一化をベースにしたセラミック素子の薄層化技術、薄層シート成形技術の進化で、7月に世界で初めて自動車のパワートレイン/セーフティー向け0603サイズにおいて最大の静電容量となる1.0μF品、1005サイズで最大の静電容量となる10μF品の量産を開始した。

 0603サイズ品は、1.0μFの静電容量を持つ従来1005サイズ品に比べ実装面積比で約65%、体積比で約80%小型化。1005サイズ品も10μFの従来1608サイズ品比で実装面積比約50%、体積比で約70%の小型化を実現。ADAS(先進運転支援システム)や自動運転などの自動車の高機能化に伴う、MLCCの小型大容量化、低ESL化による高周波特性向上の要望に応えた。

 さらに20年の世界初の0201サイズ品(最大静電容量0.1μF)の量産開始に続いて、0402サイズ、最大静電容量1.0μF品で4V品に次いで6V品を21年度中に量産する予定。スマホやウエアラブル端末などの多機能化、小型化に対応する。

長寿命化など

 コンデンサー世界市場の数量ベースで約5%、金額ベースで約30%のアルミ電解コンデンサーも、採用が増えている車載、産機向けに高温度、長寿命化とともに省電力化、小型・高性能化要求に応え、高リプル電流対応、高耐電圧化、小型・高容量化、耐振動性に取り組む。低蒸散性能を備え、低比抵抗の新電解液を採用。封止材料、製法も改良し、業界最高となる150度1500~2000時間保証、低ESR性能を実現。静電容量も従来品比1.5倍以上収容したチップ品を開発し、量産供給を始めている。

 基板自立形では高信頼電極箔(はく)、電解液保持量の高い電解紙を採用。電解液の蒸散を抑える構造を取り、業界最高温度対応125度3000時間保証品の量産が10月から始まる。

 5G基地局電源用や太陽光発電用パワーコンディショナー向けなどの高温度需要に対応する。

 自動車向けの需要が拡大している導電性アルミ固体電解コンデンサーは、材料の薄手化、高容量箔の採用で高耐電圧化、高容量化が進む。アルミ電解コンデンサー、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーの両特長を持つ導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーも高容量陽極箔の採用、電解質材料の最適化などで長寿命化、高耐熱化、高リプル電流化、高容量化の開発が加速。125度4000時間保証品、150度1000時間保証品が供給されている。

 電気二重層コンデンサーは、メモリーバックアップ用で幅広く使用されている。スマートメーター、ドライブレコーダー、衝撃感知式ドアロック解除システムなどで採用が増加。85度1000時間保証品が市場投入されている。中型品や大型品も高出力、高信頼性の特長から瞬時電圧低下補償装置、分散電源用蓄電バンク、回生エネルギー蓄電用などで採用が増えている。

 フィルムコンデンサーは、EVに代表される電動化が進む自動車向け、太陽光発電用、風力発電用の再生可能エネルギー向けの需要が増大。エネルギーの効率運用からインバーター化が進むパワーエレクトロニクス向けに供給体制の整備とともに、小型化、高耐電圧化、長寿命化の開発が進んでいる。

 タンタルコンデンサーも小型、長寿命、広い温度範囲にわたる安定した電気特性から車載ECU向けや補聴器、電子棚札、GPSトラッカーなどの小型情報端末向けの需要が増えている。小型化・薄型化、高機能、高性能、回路保護などの製品群の充実を図る。導電性高分子タンタルコンデンサーは、PCCPU周りの低ESR化の要望に応えた開発が進んでいる。