2021.09.21 日本郵船など アンモニアに燃料転換可能LNG燃料船の開発に着手 来年1月までに建造のための課題抽出
将来のゼロエミッション船のイメージ
海運国内最大手の日本郵船は、将来的にアンモニア燃料に転換できるLNG(液化天然ガス)燃料船の開発に共同で着手した。国際的な脱炭素の流れの中、大型の外航船などでは燃焼時に二酸化炭素(CO₂)を排出しないアンモニア燃料船が有望視されている。2022年1月までに建造のための課題抽出などに取り組む方針だ。
プロジェクトに参画するのはほかに、フィンランドに本社を置く船舶技術コンサルタント「エロマティック」と、これまでもグループの多くの新開発案件を手掛けてきた研究開発子会社「MTI」(東京都千代田区)。エロマティックは船舶設計面を得意としており、日本郵船側は運航、保守の観点から共同でプロジェクトを進める。
アンモニア燃料船の開発において「船会社主導で運航、保守の観点からコンセプトを開発して設計していく取り組みは国内初」(日本郵船)。
同グループでは中長期の環境目標達成のため、他の化石燃料より燃焼時に排出するCO2量が少ないLNG燃料船の導入を進めている。6月にはLNGを主燃料とする、自動車を運搬する専用船計12隻を建造する計画を公表。それぞれ最大7000台程度の自動車を積載できる専用船で、25~28年度にかけて完成させる予定だ。
グループが保有する自動車専用船の入れ替えの一環で導入を進める。12隻は、従来の重油などの船舶に比べて、輸送単位当たり約40%のCO₂排出量削減が見込まれるという。
20年10月に完成させた国内初のLNG燃料自動車専用船を皮切りに、新造する自動車専用船のLNG燃料船への切り替えを進めており、既に24年までに8隻の導入を決定。新たに12隻を加えて28年度には合計20隻となり、投資額では計2000億円弱に達する。
こうしたグループの施策の一方で、国際的な脱炭素の動きは加速。そのためグループでは、LNG燃料船を「将来のゼロエミッション船を実現するまでのブリッジソリューションの一つ」(同社)と位置付ける。
燃焼時にCO₂を排出しないアンモニアは「船舶のゼロエミ化を見据えると、有力な将来の舶用燃料の一つ」(同社)と見ており、将来的な導入を目指す。今回のプロジェクトでは、アンモニアが船舶用の燃料として広く供給可能な社会的整備が進めば、すぐにLNGからアンモニアへと燃料を転換できる船舶を開発。効率的にアンモニア燃料へ移行し使用を拡大できる。
今月から始まったプロジェクトでは、22年1月までに設計の概要をまとめ、設計段階で生じる技術的な課題を検討し尽くす。その上で、実際の詳細設計や建造に生かしていくという。
日本郵船は、プロジェクトの狙いを「技術的課題を洗い出して早期に実船開発に取り組み、船舶からの温室効果ガス排出削減に大きく寄与すること」と説明している。