2021.10.06 「身も心も」変身めざすオリンパスカメラなど見直し医療特化の「100年企業」
オリンパスの内視鏡システム
オリンパスといえば、一定年齢以上の人にとっては、カメラのイメージが強い。しかし、同社は今、医療関係事業への特化を加速させている。強みのある内視鏡をコアに、グローバルなメディカルテクノロジー(メドテック)カンパニーを打ち出している。竹内康雄社長は電波新聞の取材に、「身も心も医療の企業に」と意気込みを話し、1000億円規模の企業買収も視野に入れている。創業以来100年を超すその足取りと展望を見よう。
同社の歴史は古い。顕微鏡の国産化を目指して1919年に創立(当時は高千穂製作所)。その祖業の流れを受けて、光学などさまざまな事業を手掛けてきた。「あれもこれもある、という企業だった」(竹内社長)。
近年まで主力分野は、ミラーレスカメラなど映像事業、顕微鏡など科学事業、消化器系の内視鏡など医療事業に大別された。
しかし、2年前に打ち出した事業変革の計画で、医療分野に特化していくという大胆な見直しを打ち出した。
それに沿い、映像事業は今年初めに投資ファンドに譲渡。「オリンパス」ブランド浸透に大きな役割を果たしてきた看板を手放す形になった。光学関連の人材など経営資源を有効に活用するのが目的でもあった。
さらに、科学事業の分社化も打ち出した。グローバルな地域や事業特性に合った体制にするという。今後、外部資本の受け入れなど、在り方を再構築する可能性も指摘されている。
こうした一方で、主軸となる医療関係事業に注力。海外企業との提携や買収、新機軸を積極的に展開している。
昨年は、整形外科事業を手掛ける仏企業や、気管支の末梢部分への到達をサポートする電磁ナビゲーションシステムを手掛ける米企業を買収。今年も、外科イメージング分野の強化のため、オランダ企業を買収したり、前立腺肥大症向けのデバイスを手掛けるイスラエル企業の買収を完了したりしている。
また昨年、約8年ぶりの新型モデルとして、次世代内視鏡システムを投入。AI(人工知能)を活用した画像診断ソフトで病変部を見つけ出せることなどをアピールして、内外の市場に売り出している。
コロナ禍で、健康診断や内視鏡検査などをためらう人もいるが、「受診手控えはリスクがある」と啓発にも力を入れる。一方で、NTTドコモなどと協力し、遠隔診療の実証も進めるといった、ウィズコロナを見据えた手も打っている。
同社の2021年3月期の連結売上高は約7300億円で、うち約8割が医療関連。内視鏡以外の医療分野ではまだシェアが低いと分析し、売り上げ拡大と利益率の拡大を目指す。
エレクトロニクス業界では、医療・健康関連は、車載などと共に成長分野と目され、進出の動きが相次ぐ。「さまざまな分野から参入の動きが相次ぐ。だが、勝ち残るのは大変」と竹内社長も認める。競争の激化する中、今後、トップを目指して成長をしていけるかが注目される。
(10月6日付電波新聞・電波新聞デジタルに竹内康雄社長のインタビュー掲載。)