2021.10.19 光触媒搭載除菌脱臭機で感染症予防効果確認日大医学部とカルテック、理研の協力で実証実験

光触媒搭載の除菌脱臭機

 日本大学医学部内科学系血液膠原(こうげん)病分野とカルテック(大阪市中央区)は理化学研究所の協力のもと共同で実証試験を行い、光触媒搭載の除菌脱臭機(カルテック社製)の実使用環境下で、感染弱者の感染症予防効果が期待できる結果を得た。

 今年1月、日本大学医学部付属板橋病院にある複数の病室に、光触媒搭載の壁掛け型除菌脱臭機を6~8畳ごとに一台の割合で設置したほか、病室を結ぶ廊下には光触媒搭載の照明を合計13台設置した。

 その病室を対象に、光触媒搭載の除菌脱臭装置の設置前後1カ月間で、感染症による発症者数に、統計学的な有意差を確認したという。

 設置した病室の患者では、設置前後1カ月間で発熱性好中球減少症(FN)患者が12人から3人に、このうち65歳以上の高齢者の減少が10人から2人へと顕著に減少した。

 FNは、白血球の一種である好中球が減少し、感染症への制御がきかなくなり、死亡リスクが高くなる病態で、FN患者は、新型コロナウイルス感染症にとどまらず、あらゆる感染症へのリスクにさらされている。

 研究を担当した日本大学医学部の飯塚和秀病態病理学系臨床検査医学分野助手・教育医長は「細菌・真菌・ウイルスによる感染対策としてこれまでの実験室レベルの検証から実空間における光触媒除菌脱臭機の有効性が期待できるデータが得られた意義は大きい」などとコメントを寄せた。

 カルテックの染井潤一社長は「当社の技術が、空気感染の抑制に効果があり、医療現場で役立つことができ喜ばしい。今後も医療や生活の安心・安全に寄与するデバイスを作っていきたい」と話す。

 光触媒は約50年前にノーベル賞候補といわれる日本の研究者・藤嶋昭氏が発見。同氏は8月末に中国の上海理工大に移籍したことでも話題になった。

 原理は主材料である二酸化チタンに光が当たると、その表面で強力な酸化力が生まれ、接触する菌やウイルス、臭い物質などの有機物を分解する。

 分解エネルギーはオゾンの1.5倍、次亜塩素・塩素の2.2倍で、最も強力な酸化力を持つ。

 カルテックはこの光触媒材料開発から高性能・長寿命の優れた応用製品の開発で業績を伸ばしている。
(詳細は20日付電波新聞ヘルスケア面、電波新聞デジタルに掲載します。)