2021.10.26 出光興産、ブラックペレット事業を本格始動石炭代替のバイオマス燃料、ベトナムに大型プラント建設

プラント建設が、オンライン会見で発表された

 石油元売り大手の出光興産は、木質ペレットを蒸し焼きするなどしてバイオマス燃料化した「ブラックペレット」の製造、販売事業を本格的に始動する。ベトナムに大型プラントを建設すると21日に発表した。既存の設備のまま石炭燃料を代替でき、排出する二酸化炭素(CO₂)を低減できる。年間200万トンの供給体制を目指して今後、マレーシアやインドネシアにも製造拠点を拡大していく方針だ。

 同社はベトナムの木質ペレット製造会社に出資し、新会社「出光グリーンエネルギーベトナム社」を設立。南シナ海に面したビンディン省の木質ペレット製造工場の敷地内に大型商業プラントを新たに建設する。こうしたプラントは日本企業として初めてという。2022年上期に稼働開始予定で、「出光グリーンエナジーペレット」として製品化。年間12万トンを生産する。

 ブラックペレットは、一般に普及している木質ペレットを、20~30分程度蒸し焼きなどする「半炭化」という工程を経て燃料化される。新プラントでは、現地で一般的なアカシアなどの端材や製材後の切れ端を原料とする。

 国際的な第三者機関による認証を得た原料だけを使うので「カーボンニュートラル燃料」と見なされる。既存の石炭ボイラーなどで燃料の石炭に混ぜて使い、混焼した分だけCO₂排出を削減できる。

 既に日本国内の八つの発電所や工場などにサンプル提供し、既存設備を改修することなく、最大35%混ぜて燃焼できることを確認した。「設備の一部を手直しするだけで専焼への切り替えも可能だ」(出光興産)。

 同社は、豪州やインドネシアの石炭鉱山に出資しており、年間2000万トンを主に日本に供給。脱炭素化による環境対応のため、燃料転換を求める事業者などを中心にブラックペレットを提供していく。

 同社のブラックペレットは、通常の燃料と比べて発熱量が約20%向上する。また、耐水性があるため、石炭を野積みしている貯蔵施設をそのままブラックペレット用に転用できるなど、石炭同様の取り扱いができる利点がある。環境・バイオマス課の大谷直継課長は「石炭を使用する事業者が脱炭素化を図っていくために最も適した燃料だ」と強調する。

 30年までに年間200万トンの供給体制を目指す。マレーシアやインドネシアでも生産プロジェクトを立ち上げ、23年までに年産30万トン体制を構築する。

厄介ものを資源化

 マレーシアでは既に欧州のベンチャー企業と共同で、これまで未活用だったパームヤシの果実房を原料にブラックペレットを製造する計画を進めており、22年後半の商業化を目指している。マレーシアでは農業残さが年間約2000万㌧も発生する。ほとんどが廃棄されて環境汚染などを引き起こしているため、「厄介ものを資源化する」(大谷課長)取り組みともいえる。

 会見した石炭・環境事業部の児玉秀文部長は「世界の脱炭素の潮流の中で(ブラックペレットが)カーボンニュートラルの実現に資する現実的な一つの解だ」と期待を込めた。