2021.10.28 シャープ 新製品JD-ATM1C/CL防犯対策に効果的な防犯電話機 デジタルコードレス 11月18日発売

左がシャープの笹岡部長、右が梅本学長(日本防犯学校)

距離を置いて話すことで、冷静さを保てる距離を置いて話すことで、冷静さを保てる

 全国の総世帯数は約5300万世帯、固定電話機の回線契約数も約5300万回線。スマホ全盛の時代でも固定電話機は根強く使われている。還付金詐欺など特殊詐欺犯罪の入り口となるのが、この固定電話機だ。

 シャープは2015年から、防犯対策に効果的な防犯電話機シリーズを投入しているが、このほど新製品として、デジタルコードレス電話機の新製品JD-ATM1C/CL(オープン)を11月18日から発売する。

 新製品が画期的なのは、手に持たずに通話できる“てぶらスピーカーホン"の新スタイル子機「てもたん」を付属させたことだ。詐欺犯は、巧妙な手口で金銭をだまし取ろうとするが、なぜ詐欺に引っかかってしまうのか不思議に思った人も多いはず。実は、ある心理的な作用が働いてしまうことが、詐欺に遭う一つの要因となっている。

 詐欺犯の言葉に、ついつい耳を貸してしまう心理作用が働くのは、通話の"距離"が大きく関係している。耳元で声を聴くと感情が揺さぶられ、だまされるリスクが高まるのだという。この点は警視庁(犯罪抑止対策本部)も受話器で話すことのリスクを注意喚起している。受話器越しに聞くと、ついつい自分事になりやすく、息子や孫、役所・警察関係のなりすましによって、つい言うことをうのみにしてしまう。

 吉賀心理学研究所の北川智利代表(立命館大学客員教授/博士<心理学>)によると、「長年の研究から、耳元から聞こえる音は、人の感情に対し無意識のうちに影響を与えることが分かってきた」という。「人はパーソナルスペース(密接距離=0~45センチメートル)を持っていると言われており、スペース内に誰かが入ると嫌な気分になったり、ドキドキしたりする。電話は、いきなり耳元から声が聞こえることで、その声に親しみを感じるという錯覚が起きる。そのため、耳元の指示は無視できず、従わなければならないという心理状態に陥ると考えられる」という。

 防犯対策の権威として、テレビなどでも活躍する日本防犯学校の梅本正行学長(防犯ジャーナリスト)も「知り合いの警察官に聞いた話だが、取調室の犯人に、真正面から吐けと迫っても口が堅くなる一方だけど、耳元で"やったんだろう"とささやきかけると犯行を認めてしまうという」と話す。

 「詐欺犯は実に巧妙な手口で、人の心理に働き掛けてくる。電話に出る人の心理も突いてくる。シャープの防犯電話機の新製品は、距離を置いて話せることから、冷静に対応でき特殊詐欺の被害を防ぐ効果が期待できる」(梅本学長)と話す。

 新製品では、スピーカースタイルの「てもたん」で通話することで、パーソナルスペースから距離を置くことで、不審電話がかかってきても、耳元で通話するより冷静な対応を図ることができる。このほか、音声で電話の発信・着信操作ができるので、家事や仕事の手を止めずに「ながら電話」ができるのも便利だ。

 スピーカーホン通話機能を使い「てもたん」を数人で囲みながら、友人や離れて暮らす家族と通話するという使い方もできる。

 また、警視庁犯罪抑止対策本部や大阪府警察本部特殊詐欺対策室のアドバイスを基に開発した、電話が鳴る前に警告する「自動着信前警告」、通話の前に相手を確認できる「自動聞いてから応答」の2重の防犯対策も採用、さらに電話をかけてきた相手が安全かをランプの色(緑・赤)で知らせる「あんしんフラッシュランプ」など、詐欺・迷惑電話対策機能が充実している。

 特殊詐欺事件はこれからも増加が懸念される。今でも1件当たりの平均の被害金額は190万円に上るという。コロナ禍で在宅時間が伸びたことで、こうした犯罪者にとっては"都合が良い"状況でもある。

 シャープでは、15年から防犯電話機シリーズを投入し累計で40万台を販売しているが、「新製品の投入で、さらに普及を加速し、被害防止に貢献したい」(シャープ国内スモールアプライアンス事業部・笹岡孝佳スマート事業推進部長)としている。離れて暮らす親へのプレゼントとしても良い一品かもしれない。

 市場想定価格は「てもたん」と親機のタイプが税込み2万8000円前後、「てもたん」・親機・コードレス子機各1台のタイプが同3万8000円前後。