2021.11.12 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<65>北欧に学ぶローカル5G導入障壁の突破方法①

 最新作の映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、筆者にとって思い出深い初めての海外出張の地、ジャマイカがロケ地の一つになっているので楽しみにしていた。

 当初は2020年2月に全世界公開とアナウンスされていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年10月まで3度も延期した。それゆえ、ジェームズ・ボンドファンにとっては待ちに待った劇場公開となった。

 映画の中でボンドが使用する小道具はプロダクトプレイスメント(実在の企業や商品を登場させる広告手法)で提供され企業にとっては商品をアピールする絶好のチャンスとなる。スマートフォンもしかり。しかし、今回は1年8カ月も公開が遅れたため、公式パートナーは「当時の最新4Gモデルではちょっと……」と頭を抱えたに違いない。

 と思いきや、スクリーンに映し出されたスマホはノキアの最新5Gモデルに見えた。この場面だけ撮り直して差し替えたのか、CG(コンピューターグラフィックス)で差し替えたのか--。ともあれコロナ禍はボンドブランド戦略にも影響を与えていることは確かなようだ。

FWA端末を発表

 さて、ノキアといえば、10月に日本のローカル5G仕様で初となる固定無線アクセス(FWA)端末を発表したばかりだ。また、今年の1月からはノキアクラウド型ローカル5Gソリューション「NDAC」(ノキア・デジタル・オートメーション・クラウド)の国内提供も始まっている。

 これらは、北欧からの熱いローカル5G応援メッセージのように思えるのは、筆者だけだろうか?

 一年前にさかのぼる。20年10月、同社は「5G、30年までに世界でGDPを8兆ドル増加予測:日本企業に有利な状況」という、われわれの目を奪うような調査レポートを発表した。

北欧に学ぶローカル5G導入障壁の突破方法

8兆ドルの価値

 ノキアとノキアベル研究所の最新調査によると、「5Gが企業と社会に与える影響は大きく、かつ広範囲に及び、5G関連産業は30年までに世界経済に8兆ドルの価値をもたらすと予測した」とある。

 また、同社の「5G ビジネス・レディネス」リポートでは、「5Gは日本の持続可能な経済成長とデジタル・トランスフォーメーションの主要な推進力となる」とし、その根拠を述べている。

 同時に、日本における5G採用の障壁として、「エコシステムの利用可能性」「教育と理解」「認識」「コストと複雑さ」「セキュリティー」の五つを挙げている。

 確かに、どの指摘も的を射ているように思える。しかし、ニューノーマル(新しい日常)への変革が迫られている今、5Gの歩みを〝止める暇はない〟だろう。

 今回からのシリーズではリポートを読み解きながら、数回にわたって製造業を中心にローカル5G導入の障壁と突破方法について考察したい。(つづく)

 〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉