2021.12.21 ストリート・アートを再現 バンクシーって誰?展グローバルゲート ガレージ名古屋で22年3月27日まで

バンクシー《風船と少女》

バンクシーが描いたガザ廃墟の子猫バンクシーが描いたガザ廃墟の子猫

 時代の先駆者バンクシーのストリート・アートを再現した「バンクシーって誰?展」名古屋展が19日、グローバルゲートガレージ名古屋(名古屋市中村区)で始まった。撮影可能で、2022年3月27日まで。

 ストリート・アーティストの先人で現代アートの巨匠、ヘリングやバスキアの次世代として注目される、アート界の異端児バンクシー。神出鬼没の存在で素顔はベールの中だ。ブラックユーモアに満ちた作品は、スプレーを使ったステンシル(型紙)技法で世界中の壁や橋などにいつの間にか描かれる。代表作「風船と少女」は1億5000万円で落札されるや、バンクシーが額に仕込んだシュレッダーで突如裁断され、世界を驚愕させた。

 同展では、世界各都市を巡回し人気を博した「ジ・アート・オブ・バンクシー展」の傑作群を、テレビ局の技術力を使い街並みごと再現。異空間でバンクシーの世界観に触れられる。アンバサダーに就任した俳優の中村倫也さんが音声ガイドに挑戦している。

 主な作品と説明は以下のとおり。
 ▽バンクシー《ラヴ・イズ・イン・ジ・エア》

バンクシー《ラヴ・イズ・イン・ジ・エア》

 50年以上もイスラエル政府の占領下にあるパレスチナ。イスラエル軍の圧倒的な武力に対して投石やゴムパチンコで抗議した運動をモチーフに、男の手には石の代わりに花を持たせた。パレスチナのベツレヘム郊外に今も残っている。

 ▽バンクシー《ギャングスタ・ラット》

バンクシー《ギャングスタ・ラット》(左から2番目)バンクシー《ラヴ・ラット》(右)

 90年代からイギリス南西部ブリストルで活動していたバンクシーは01年からロンドンに拠点を移し、街中に大量のドブネズミ(ラット)を描き残す。フランスのステンシル・アートの父と呼ばれるストリート・アーティスト、ブレック・ル・ラットに影響を受けたとされるが、バンクシーの描くラットはより擬人化されている。街でいたずらをする「ギャングスタ・ラット」が有名なシリーズ。

 ▽バンクシー《ラヴ・ラット》
 バンクシーが活動初期から自らの自画像であるかのように描き続けているドブネズミ(ラット)がハートとともに愛を訴えている。「彼らは許可なしに生存する。彼らは社会から嫌われ、追い回され、迫害される。ゴミにまみれて絶望のうちに粛々と生きているが、彼らはすべての文明を破滅させる可能性を秘めている。もし君が、誰からも愛されず、汚くて、取るに足らない人間だとしたら、ラットは究極のお手本だ」(Banksy, Wall and Piece, Century, 2005, p.95)

 ▽バンクシー《ノラ》

バンクシー《ノラ》

 05年8月、カトリーナ・ハリケーンの大洪水で死者1800人以上を出したニューオーリンズ。本来雨から身を守ってくれるはずの傘の内側が土砂降りになっているステンシル画は、未曾有の大惨事で機能不全に陥った州や、国の不充分な災害対策を批判すると同時に犠牲者を追悼している