2022.01.04 出光興産の木藤俊一社長  移行期戦略を語る事業の延長線上にカーボンニュートラル

インタビューに応じる木藤社長

 石油元売り大手の出光興産の木藤俊一社長が、電波新聞社などの共同インタビューに応じた。脱炭素の潮流で事業環境の変化が進む中、石炭事業を手掛ける同社は、既存の設備のまま石炭に代替できるバイオマス燃料として、木質ペレットを蒸し焼きするなどしたブラックペレットの製造販売事業を本格化することなどを公表している。

 木藤社長は、移行期の戦略について「(当社が)自らの手でやってきた事業の延長線上にカーボンニュートラル・トランスフォーメーションがある。これを強みにしていきたい」と語った。

 同社は2021年5月、中期経営計画の大幅な見直しを発表。50年までに事業活動で排出する二酸化炭素(CO2)を実質ゼロにする目標を盛り込んだほか、将来的な事業ポートフォリオを転換する方針を示した。

 木藤社長はインタビューで、化石燃料に依存した収益が全体の9割を占めている同社の現状に言及した。「現在、必要とされるエネルギーからトランジション(移行)していくことは極めて重要だ」と指摘。「(収益規模で多くを占める)化石燃料や基礎化学品について、30年くらいまで、かなり依存した形は大きくは変わらないだろう」との見通しを示した上で、再生可能エネルギーや水素、アンモニアなどを挙げて「(その間に)しっかりと布石していく必要がある」と述べた。

 一方、100%子会社、ソーラーフロンティア(東京都千代田区)が独自開発した太陽電池の生産停止を決めたことについては「ソーラー事業は長い目で見れば成長分野。しっかりと衣替えして続けたい」と話した。具体的には安価なパネルを仕入れるなどして、これまでソーラーフロンティアが確立してきたサプライチェーンや、ガソリンを卸す特約販売店などを通じて個人客などに販売する。「幅広い顧客層に、柔軟に対応できる体制を取りたい」とした。

ブラックペレット提供

 また、出光興産では、石炭に代替できるブラックペレットは既設のボイラーなどで石炭に混ぜて利用でき、混焼した分のCO2排出を削減できることから、燃料転換を求める事業者などを中心に提供していく。石炭鉱山を約30年経営してきた豪州では、鉱山跡地にバイオマス燃料用植物でキビの一種、ソルガムを植える事業なども始めている。

 木藤社長はこうした事例を振り返り、「今までやってきた延長線上に足を着けてトランジションを行うのが方向性だ」と強調した。