2022.01.13 【放送/機器総合特集】放送機器各社 22年の戦略住友電気工業 貴田渉ブロードネットワークス事業部事業部長
貴田 事業部長
宅内端末の品ぞろえ強化
Wi-Fi付き10G-ONUなど
当事業部の主力の3事業~ネットワーク機器事業、STB事業、CATVシステムインテグレーション(SI)事業~は堅調を維持しており、特にCATV-SI事業は過去最高の繁忙ぶりで好調に推移している。
一方で半導体・電子部品の世界的な品薄・長納期化が顕著になっており、この不安定な状況はしばらく継続することが予測される。当事業部では商流の複数化や代替品の採用検討と並行して、お客さまからも長期の需要情報を入手し、部品の早期確保で安定供給に努めていきたい。
通信インフラ分野は、新型コロナ対応の長期化に伴うテレワークやオンライン授業の定着、映像配信サービスの利用拡大などにより、データトラフィックが増加している。
これに対応するため、CATV事業者は通信インフラの強化に積極的だ。
総務省は「高度無線環境設備推進事業」として、5G/IoTなどの実現に向け、高速・大容量無線通信の前提となる伝送路設備などの整備を支援している。同事業を活用した伝送路の光化が進んでおり、当社は全国で複数の光化工事を対応させていただいている。完工に向け安全第一で関係者一丸となって進めていく。
10G-EPONセンター装置(10G-OLT)と宅内端末(10G-ONU)など、ネットワーク機器事業も好調だ。10G-OLTは、現在90局以上のCATV事業者に採用され、トップシェアを獲得している。
また、1Gと10G-ONUの混在運用が可能な点や、他社製ONUとの相互接続実績が強みだ。今年はWi-Fi付き10G-ONUなど、宅内端末のラインアップ強化で宅内通信環境の向上に寄与していきたい。
さらに、ネットワークの安全・信頼性確保のため自動で予備系に切り替えるPON冗長化システムの製品化を目指す。保守事業を展開する子会社と連携し、システム納入から保守サポートまで一貫体制で提供している。
放送分野は、主力の「FLEXCITER」シリーズに、CATVのローカル自主放送にACASによるコンテンツ保護・視聴を制御する「高度ケーブルローカル自主スクランブル装置」を加えた。ローカル自主放送の4K化を支援し、魅力ある4K放送の提供を推進する。
大雨水害などに対する防災意識が高まる中、ハイブリッドキャストを活用し防災カメラの映像をライブ配信するシステムを提供することで、減災社会の実現にもつなげていきたい。
本システムは、国土交通省の河川や道路の監視カメラ映像をハイブリッドキャストの仕組みを使ってMPEG-DASH方式で配信する。これにより加入者は地図上から見たいカメラを選び、河川や道路のリアルタイム映像をテレビで視聴できる。
昨年6月に発表された日本ケーブルテレビ連盟の「2030ケーブルビジョン」を当事業部は大変注目しており、放送・ネットワーク・ワイヤレス分野において重点的に対応すべく、30年に向けた開発をスタートさせている。
光化されたネットワークの活用方法として、放送のIP化がある。当社は通信キャリア向けに放送系IP再送信装置およびIP-STBの開発・商用運用実績があり、この技術をCATV事業者へ展開していく。
既に10G-OLTには、IP放送の技術的条件になっているIPマルチキャストやQoSなどの機能を追加した。放送装置についてもIP放送用ヘッドエンド装置の製品化、IPマルチキャスト伝送によるIP放送のフィールドトライアルへの参画など引き続き積極的に進めていく。
当事業部で提供している装置は、情報通信インフラの基幹を担っている。CATVの社会的なつながりを考慮すると、われわれが果たす社会的責任・役割は大きい。
この点に誇りと緊張感を持ってCATV事業者の信頼と期待に応えられるよう、継続的に努力していく。