2022.01.13 【放送/機器総合特集】放送機器各社 22年の戦略ミハル通信 中村俊一社長
中村 社長
昨年に引き続くコロナ禍において、リモートワークの増加に伴う逼迫(ひっぱく)するトラヒックに対応する同軸回線の設備改修、4K放送普及に向けたFTTH(光回線)、ヘッドエンド装置のリニューアルの案件が多かった。全体ではほぼ横ばいで推移する。
地上デジタル放送ネットワークの冗長化に向けて、8K素材を伝送するシステムを強化してきた。昨年は現在開発中の超低遅延8K HEVCエンコーダー/デコーダー「ELL(エル)8K」を大いにアピールできたと思っている。超低遅延システムを実現するため、エンコーダ-/デコーダーの開発はもちろん、変調・復調の仕組みも独自開発している。今夏には販売できるように開発を進めている。
ELL8Kは、2020年の4K・8K映像技術展で初披露し注目を集めている。一昨年の超低遅延機能に加え、音声機能も追加した。音声は最大64chの出力に対応。21年の4K・8K映像技術展とInterBEEで一般公衆回線(フレッツ光ビジネス回線)を使用し、8K映像に音声も加えた8Kライブ映像の掛け合い伝送デモを行った。
エンターテインメントや遠隔医療、ライブ配信、自治体関係などさまざまな産業分野への活用が期待される。そのほかに鉄道系、監視系などからの問い合わせも多く、具体的な案件もあり、アプリケーションが見えた年だった。8K映像と多チャンネル音声を同時に出力できるのは当社だけだと自負している。
さらに、お客さまの要望もあり、小型4K/2Kに対応した低遅延の多チャンネルで伝送できる製品を予定している。今年中には開発・製品化を目指している。昨今、ローカル5Gが注目されている中、当社としても積極的に取り組んでいく。今後、ELL8Kと一緒に5Gやローカル5Gを合わせながら提案していく。
一方で、半導体(部品)不足の影響を受け、設計変更により代替部品を探すなどを繰り返しながら対応している。今後さらに厳しい状況が懸念されるため、安定した部品との入れ替えを行いながら、調達方法と製造の組み方を見直す考えだ。
以前からケーブルテレビ業界は人手不足が共通課題で、働き方改革の推進を目的に進めていたリモート監視・運用支援する管理プラットフォーム「M-3(エム・トリプル)」保守サービスはほぼ計画通りに進んでいる。今年はさらに事業拡大を目指す。
製造ラインも自動化をどんどん進めている。以前から製造ラインでの効率化を図るためにロボットを利用している。今はロボットを利用したラインを2倍に増強している。光回線でインターネットを利用するためには欠かせない「光回線終端装置(ONU)」の工程をロボット化しており、今回2倍にしたことで4人必要なところを1人でできるようになり、省人化が実現できた。今後も生産の自動化を強化する。
社内では働き方改革をさらに進めて、余った時間を有効に使い、アイデアを生み出す環境づくりに注力する。
今後も世の中に役に立つ製品を出したいと思っている。また、ホームぺージ(HP)も動画コンテンツを充実させて、お客さまとのコミュニケーションの場として進化させたい。地域DXの担い手として、さらにお客さまに寄り添っていきたいと思っている。