2021.09.07 常態化する水害『教訓生かせ』8月豪雨、顧客対応に奮闘する佐賀県の電器店

浸水した電化センターキハラの店内(15日、写真提供=同店)

「ここまで水が上がってきた」と示す福恵無線の渕野社長「ここまで水が上がってきた」と示す福恵無線の渕野社長

 8月11日からお盆を挟み、九州北部などで降り続いた大雨。佐賀県嬉野市では降り始めから18日までに、年間降水量の5割超の1178ミリの記録的雨量を観測し、同県武雄市では建物の床上・床下浸水が1650棟に達するなど、河川の氾濫や土砂災害が多発した。

 住宅や事業所、農業など影響は広範に及び、家電流通も例外ではない。佐賀県電器商業組合によると、県内5店の組合加盟店が床上まで浸水。同県では2019年8月にも豪雨被害を受けており、度重なる浸水への対応と備えが課題になっている。

盆休み返上で対応

 東芝ストアーの電化センターキハラ(佐賀県小城市、木原伸一社長)は床上約25センチメートルまで浸水。テレビなど運べる商品は2階に移して無事だったが、コピー機やマッサージチェアなどが漬かった。

 日立チェーンストールの山茂電機(同県武雄市、山口信之社長)は店舗に被害はなかったが「大型家電が漬かった」と顧客からの修理や納品の依頼は多く、盆休み返上で冷蔵庫やIHクッキングヒーター、エコキュートなどの対応に当たった。

立ち直ったけれど

 2度目の浸水に打撃を受けた電器店も。パナソニック系の福恵無線(同市、渕野和雄社長)は床上約1メートルまで浸水。同店は19年にも床上約1.3メートルまで漬かり、昨年2月に営業再開したばかり。

 渕野社長は「前回の水害で店を閉じようとも考えたが、顧客から『やめないで』と言われ、何とか立ち直った」と話す。顧客からの修理依頼の電話は鳴りやまず、仕事道具を知り合いに借りるなどして対応を続けている。

 パナソニック系のカワチノ電器商会(同市、河内埜章社長)も床上約1.2メートルまで浸水。テレビは店の入り口まで流された。2年前の経験から商品を避難させたが、今回は「予想以上の浸水」だったという。今は店舗の復旧より被災した顧客への対応を優先している。

 量販店にも同様の影響が出ている。ベスト電器武雄店(同市)には、浸水に遭った住民が生活家電の買い替えのため殺到。8月15~26日の間に冷蔵庫の売り上げは前年比の2倍、洗濯機は3倍に達した。

 だが、再び被害に遭うことを懸念して比較的安価な商品の購入が目立つという。中村武弘店長は「2度目の被災で困っているお客さまが多い」と話す。

「備え」が重要に

 パナソニックが昨夏の台風対策に関して全国の20歳以上の1651人に行った実態調査(7月実施)によると、屋外での対策では雨戸の使用など飛来物対策は施されている一方、屋内の対策で「特に対策はとらない」が4割、「エアコン室外機の対策は取らなかった」が約9割に上っている。

 今回の九州北部の水害でもエアコン室外機の流失、浸水が目立つ。また避難時は漏電を防ぐためブレーカーを落とすことや、浸水した機器の取り扱いなど、業界側から注意喚起すべき事項は多い。

 常態化する水害への備えには、自治体が啓発する「速やかな避難」とともに「暮らしの安全と財産を守る」ための周知と対策がより重要になっている。