2021.09.10 洞窟のような店内で魅力的な中古スマホと出会うECサイト「にこスマ」が渋谷に初の実店舗

チューズベース渋谷の入り口。百貨店業界としては初のメディア型OMOストアだ

 国内の中古スマートフォン市場は年間163万台(2019年度)とされ、25年度には265万台に拡大すると予測される(20年3月、MM総研調べ)。

 ただ、新品スマホの出荷台数に対する中古の割合はわずか5.9%。中古スマホは、一般的に広く利用されているとは言い難いのが現状だ。

 もっと中古スマホの認知度を上げたい―。中古スマホのECサイト「にこスマ」を展開するBelongは9月2日、初の実店舗を渋谷にオープンした。ウェブ消費と店頭での買い物の垣根を越えるための挑戦だ。

店頭で気に入った商品のQRコードを読み込み、「お買い物バッグ」に入れる

この日、西武渋谷店(東京都渋谷区)に開業した「メディア型OMOストア」の「CHOOSEBASE SHIBUYA」(チューズベース渋谷)。ECサイトと店頭が連動した新しい店舗形態で、商品のショールーム的な機能を持ちつつ、実際に購入もできる。

「お買い物バッグ」の画面。商品名とグレード、金額が表示される

 ユニークなのは店頭でウェブショッピングのような買い物ができる点。入り口で手持ちのスマホからQRコードを読み込み、ウェブカタログを入手。それをガイドに店内を回遊し、気に入った商品はストア内で実際に手に取れる。

 洞窟のような雰囲気の店内で、客は化粧品や衣料品、アクセサリーなどさまざまなジャンルの商品を眺めるうち、中古スマホに出合える。

 Belongの大野正稔プロダクトマネージャーによれば、「中古スマホは発売から3~4年で、取り扱いが一番多くなる」という。

 にこスマが展示するのはアップルiPhoneの2機種。まず、メイン機種として最も引き合いの多いiPhone8だ。にこスマでは2万円前後の価格帯で取引される商品で、ECサイトと店頭は同じ価格にそろえた。

 もう一つは大野氏も「デザインが大好き」というiPhoneSEの第1世代。4インチのコンパクトなサイズで、絶版ながら根強いファンがいる機種だ。

 にこスマの特徴は「三つ星スマホ」と銘打つ独自の品質基準。ネットワーク利用制限がなく、SIMロック解除済みで、バッテリー容量も80%以上など、厳格な基準をクリアしたものだけを扱う。

 基準の一つが、外観のきれいさ。オペレーションセンターのスタッフが画面や本体に割れや欠けがないか厳しく検品する。

 外観の等級はA~Cまでの3ランク。最高のAランクは擦れも全くなく、まるで新品のよう。

 にこスマでは、ECサイトで購入したお客のカスタマーレビューを加工なしで掲載している。大野氏は「グレードCなのに届いたら想像以上にきれいだった、という声が非常に多い」と話す。

 店頭で気に入った商品を、手持ちのスマホからサイト内の「お買い物バッグ」に入れると、ラインかメールアドレスに通知が来る。カウンターに行き、決済QRコードをスタッフに読み込んでもらえば支払いは終了。クレジットカードかQR決済を選べ、現金の受け渡しはしない。

にこスマ基準の「きれいさ」。奥からA、B、Cグレード。Aは新品同様だ

 QRコードが読み取られた商品が、実際に購入されたかどうかの購買情報は西武渋谷とBelongが共有し、マーケティングの改善につなげていく。そごう・西武リーシング本部の宮崎剛史氏は「ウェブカタログの表現や、陳列の場所も含めて検討・見直ししていきたい」と話す。

 今後の中古スマホ市場はどうなるのか。大野氏によれば、「5Gスマホのニーズはまだ始まっていない」としつつ、iPhone12の次世代機が発売された後、中古市場でも第5世代移動通信規格5Gスマホの流通が始まると期待する。

 アンドロイドスマホについては「Google Pixel 5a (5G) やAQUOS sense5Gなど新品で5万円台のミドルレンジクラスが中古市場に入ってくれば、活発に取引される可能性はある」とみる。

 中古スマホの人気は広がるか。大野氏は「ECだけでは認知度向上には限界がある」と認める。実店舗との相乗効果で、生活者の買い物カートに「中古スマホ」を加えたい考えだ。

カウンターで決済QRコードを読み込んでもらい、支払い完了。現金は使わない。希望すれば梱包もしてもらえる