2022.03.25 【関西エレクトロニクス産業特集】万博の機運醸成と中小企業支援強化近畿経済産業局 伊吹英明局長に聞く

関西経済躍進のチャンス

中小企業DX推進、伴走型支援体制を構築

 -近畿地方でもまん延防止等重点措置が解除されました。近畿経済圏の経済・景気の見通しは。

 伊吹局長 コロナ禍の影響は続いており、飲食、宿泊、観光など、人の流れに関連する産業を中心に大きな打撃を受けているが、一方で、製造業を中心に比較的堅調な企業もあり、小売業でも食品などに好調な面も見られる。

 今後については、国際情勢の緊張の高まりによる供給制約の長期化、原油価格高騰などの影響を受けて、先行きを不安視する声が多く、先行手配や調達先の見直し、代替品の活用、料金値上げなどを検討している企業が見られる。

 また、ウィズコロナ時代に向け、事業転換や、デジタル・グリーンなど成長が期待される分野への新事業展開を進める企業の動きもある。

 -大阪・関西万博が3年後に開催されます。近畿経産局としての現時点での対応は。

 伊吹局長 万博の開催は関西経済の躍進のチャンスだ。当局では、万博会場のみならず関西全体をパビリオンと見立て、万博の機会の活用に向けた会場外のさまざまな活動を全力で支援する。

 例えば、万博のテーマに親和性の高い取り組み・活動を「360。EXPO拡張マップ」として取りまとめ、MaaSや地域ブランドなど局が直接支援しているものや、博覧会協会が募集する「TEAM EXPO 2025」プログラムに登録された取り組みを紹介している。

 今後、さらなるコンテンツの充実を図り、万博の機運醸成に取り組んでいきたい。

 -コロナ禍で管内の多くの中小企業が疲弊しました。今後のDX推進の取り組みについて教えてください。

 伊吹局長 当局では、新型コロナウイルス感染症の影響により加速した社会の変革に対応するため、中小企業のDX推進を支援しており、これを実現する枠組みとして2021年7月に「関西DX推進プラットフォーム」を立ち上げた。

 このプラットフォームではITベンダーや産業支援機関などとの人的ネットワークの形成、DXに関する情報発信、専門家の派遣、ITベンダーとユーザー企業のマッチングのほか、新たなビジネスモデルの開発に向けた実証のサポートを行っている。

 関西地域の関係者が一体となって伴走型支援体制を構築し、地域中小企業のDXを強力に進めていきたい。

 -サイバーセキュリティー対策も大きな課題になっていますが。

産学官が連携

 伊吹局長 近年、サプライチェーンの弱点を突くサイバー攻撃が増えており、中小企業にもサイバーセキュリティー対策に努めていただく必要がある。

 こうした背景から関西の産学官連携による「関西サイバーセキュリティ・ネットワーク」を構築し、セキュリティー人材の発掘・育成、情報交換、機運醸成の取り組みを進めている。

 全国で唯一、経済産業局と総合通信局が相互協力合意書を締結したもので、関西を代表する研究者による人材育成、セキュリティー分野のコミュニティー活動の支援や地域企業がセキュリティー対策を進めやすい環境整備を行っている。

 -関西でも人の移動に大きな変革をもたらすMaaSへの取り組みが活発ですね。

MaaS実装へ

 伊吹局長 地域における交通課題解決のためにデジタルを活用する取り組みとして、100年に一度のモビリティーの大変革の一つとして注目されているMaaSを紹介したい。19年度から経済産業省と国土交通省が連携して「スマートモビリティチャレンジ事業」を実施し、MaaSの社会実装に向けて取り組んでいる。

 関西においても福井県永平寺町、兵庫県播磨科学公園都市(たつの市、上郡町、佐用町)、大阪市が、それぞれ企業と協働しながらMaaSの社会実装や高度化に向けた実証事業を進めている。

 また、関西の四つの国の出先機関(経済産業局、運輸局、総合通信局、地方整備局)が合同でシンポジウムを開催するなど、省庁横断的な政策課題の解決に向けた取り組みも進めており、今後の活動に注目していただきたい。