2019.12.23 ネットワークカメラ映像から数千人の群衆人数をカウント キヤノンが技術開発

群衆人数カウント例

グラフ化ツール画面グラフ化ツール画面

 キヤノンはこのほど、カメラで撮影した数千人規模の群衆人数をリアルタイムに数える人数カウント技術を開発した。ディープラーニング(深層学習)技術を活用することで従来技術よりも数倍の人数カウントを数秒でできるようになった。これを受け、キヤノンマーケティングジャパンは新技術を搭載した映像解析ソフトを発売。スタジアムやショッピングセンター、駅、避難所など混雑状況をリアルタイムに把握したいという需要に応えていく。

 開発した技術は、ネットワークカメラで撮影した映像などから人の頭部を検出することで人が密集している状況でも人数をカウントできるようにした。「これまで身体の上半身で検出していたことから重なりが多い場合などの検出が難しかったが、今回ディープラーニングにより頭部検出を実現したことでカウントできる人数が飛躍的に増やせた」(キヤノン)という。

 群衆をカウントできるエリアは、カメラの設置角度により変わるが俯角で10度から65度の範囲に映る人の認識ができるようになっている。「埼玉スタジアム2002と同等の最大7000平方メートルの範囲でカウントできる」(キヤノン)とする。カウントするエリアの設定も自由にできるほか、複数カメラを組み合わせて広範囲での人数カウントも可能だ。
 
 AI(人工知能)を活用しているものの高性能なGPU(グラフィックプロセッサ)は必要なく一般に使われるパソコンで動作するため、運用コストも下げられるとみる。
 
 12月下旬からキヤノンMJはこの技術を搭載した映像解析ソフトを発売する。これまで約1500人までの人数をカウントできるソフト「ピープルカウンター」を発売してきたが、今回機能を拡充し「ピープルカウンター・プロ」として発売する。

 ピープルカウンターは「エリア人数カウント」と「通過人数カウント」機能を用意し提供してきた。今回のプロは開発した技術を組み込み、「群衆人数カウント」機能と、カウントした人数データをグラフ化する「データ・ダッシュボード」機能を搭載した。ダッシュボードでは時間経過の推移や対前年や前週のデータ比較などもできる。

 群衆人数カウント機能を使えば数千人規模のカウントができる。18年に開催されたラグビーの国際試合での実証実験では約6000人を数秒でカウント。カウント人数の誤差は5%以内に収まった。

 「キヤノンのネットワークカメラと組み合わせることで、防犯や防災、安全対策、マーケティングなど様々な用途で利用できる」(キヤノンMJ)という。価格は最小構成で100万円(サーバー、カメラ、ライセンス)からとなる。公共施設や複合商業施設、スタジアム、駅、空港などに提案していく。