2022.04.01 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<81>5G×ディープラーニング=DXになる②
今年の桜の開花は人工知能(AI)が予想していたともいえる。島津ビジネスシステムズが無料提供している、AIを用いた桜の開花・満開予想サービス「AIさくら予想」は、1月20日に全国のお花見スポットを対象とした桜の開花・満開予想を発表していた。
AI予想ほぼ的中
予想では、東京の開花は3月22日、満開は29日とあった。実際の開花日は日本気象協会によると3月20日、満開日は27日だった。2カ月も前に、AIがわずか2日違いで開花日と満開日を予測していたことになる。開花日の振れ幅(バラツキ)が20日近くもあることを考慮すれば、ほぼ的中といってもいいだろう。
このAIさくら予想は、全国の約1000会場から過去13年間に及ぶ桜の開花状況に関するデータ約127万件、全国のアメダスから収集された気象ビッグデータ約10万件などを使用して桜の休眠、休眠解除、花芽発育の各ステージと気温、気象の変化パターンの関係をAIに学習させることで独自の予想を行っているらしい。
今後、革新的な深層学習(ディープラーニング)による気象ビッグデータの活用が進むと、今までできなかった災害予防など社会課題の解決ができるかもしれない。
さて、前回は新人やユーザーなどの初心者を前に第5世代移動通信規格5Gの説明をする際に、筆者はeMBB(超高速)やURLLC(超高信頼・低遅延)といったNR(新無線)技術の話は一切しないことを述べた。その代わり「5Gとは現実社会(フィジカル空間)とデジタル空間の間で、データを回す役割を果たすもの」と、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)における5Gの必要性のみを簡潔に述べる、という教え方を紹介した。
この5Gが回すデータこそが、気象ビッグデータをはじめとした「ビッグデータ」に他ならない。現実社会におけるあらゆるモノやヒトは時々刻々と変化している。その変化情報をスマートフォンやIoTのセンサーで捉えて収集し、データベースに蓄積したものがビッグデータになる。
必ず変化が潜在
筆者は、講義の中で「ビッグデータは新たな産業革命の新たな資源」と述べている。現実社会におけるさまざまな課題は、全て何らかの変化から生じている。つまり、顕在する課題の裏側には必ずなにがしかの変化が潜在するわけだ。
例えば〝状態変化〟についてみてみたい。(人や動物の)病気や(機械の)故障、会社の経営悪化、災害などが起こる前に、ヒトやモノに関わる何らかの状態の変化があるはずだ。その変化を捉えず見逃す手はない。
しかし、その変化のうち顕在化しているものは氷山の一角であり、現実社会においては見えず、聞こえず、潜在しているものが大半であるといっても過言ではないだろう。
そのため、カメラやマイクによる映像データをはじめ、さまざまなIoTで収集する膨大なビッグデータが必要となる。このビッグデータ資源から課題解決に必要な変化の情報を発見する新たなデジタル技術が「ディープラーニング」であり、そこへデータを運ぶ重要な役割を果たすのが「5G」だ。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉