2022.04.14 仮想空間で治療疑似体験、効果に期待IBMと順天堂大、メタバースに病院構築
メタバース上に構築する「順天堂バーチャルホスピタル」のイメージ
日本IBMと順天堂大学は、インターネット上の仮想空間「メタバース」を医療分野で活用するための共同研究に取り組むと発表した。メタバース空間に実物と同じ病院を構築して患者に利用してもらい、仮想空間での治療の有効性を検証する国内初の試み。効果が確認されれば、医療サービスの新たな形として注目を集めそうだ。
同大が運営する順天堂医院(東京都文京区)を3次元モデルの「順天堂バーチャルホスピタル」としてメタバース上に再現。2022年中に同ホスピタルを構築し、実物と同じ構造の仮想空間で医療サービスを展開させたい考え。
患者や家族が来院する前に病院の様子を体験できる仕組みをつくるほか、説明が複雑になりがちな治療をアバターを通じて疑似体験してもらい、治療に対する理解が深まるかを検証する。また、外出が困難な患者向けには病院外を再現したバーチャル空間で家族や友人と交流できる「コミュニティ広場」の構築も検討する。
特に期待されるのが、アバターが仮想空間で治療を疑似体験することで得られる改善効果だ。
「例えば歩行障害のあるパーキンソン患者のアバターが仮想空間で元気に歩く自分の姿を見て、こうすれば歩けると脳の中に覚え込ませることで、歩行の改善につながる可能性がある」。日本IBMと共同研究に乗り出す順天堂大学の服部信孝医学部長・研究科長は、メタバースを使った治療をこう展望した。
失語症の患者が、メタバース空間で言葉を発する自分のアバターを見ているうちに、内側から刺激を受けて症状が改善するなど認知行動療法での有用性が想定されるという。うつ病をはじめとする精神疾患や、認知症患者の脳トレーニングでも効果が期待されている。(詳細は15日付の電波新聞・電波新聞デジタルに掲載します)