2022.05.06 外資IT大手、日本市場で攻勢 海底ケーブルを新設、DX人材育成も
外資IT大手が日本市場への攻勢を強めている。グーグルは日本とカナダを結ぶ海底ケーブルを来年にも建設しクラウド事業を強化。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、立ち遅れが指摘される日本のデジタル人材育成に向けた新たなプログラムを用意した。こうした動きに追随して、ソフトウエア開発の外資各社も日本での事業拡大に照準を合わせており、国内IT企業との攻防が激しさを増しそうだ。
昨年9月に創設されたデジタル庁は、政府や地方自治体が共同利用するガバメントクラウド整備のためのクラウドサービスとして、米アマゾン・ドット・コム傘下でクラウドサービスを提供するAWSと、米グーグルのクラウドを選定。巨大データセンターを持ち「ハイパースケーラー」と呼ばれる世界的IT企業が、日本政府の基盤システムにも採用され、揺るぎない地位を築いている。
グーグル・クラウドは日本でのさらなる通信ネットワーク拡充を目指し、茨城県と三重県からカナダを結ぶ新たな海底ケーブルの建設を発表。グーグル検索やフリーメールサービス「Gmail」などのサービスの低遅延アクセスにつなげるほか、両国のネットワーク事業者向けに伝送容量の拡大を狙う。
AWSジャパンは、日本企業のデジタル人材育成を個別に支援するプログラム「AWS Skills Guild」を打ち出した。必要なデジタルスキルを習得するための人材育成計画の立案からトレーニングまでを包括的に支援し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する人材育成とIT技術の革新を支援する取り組みだ。
人材育成計画の立案のほか、計画に基づくコンテンツの提供やトレーニングの実施、育成を担う推進組織の立ち上げ、育成メンバーへの研修などを想定。クラウド技術についてのトレーニングや認定取得は有償だが、プランニングなどは無償で提供するという。
クラウド利用一貫支援
一方、統合基幹業務システム(ERP)の独大手SAPは、クラウドサービスの導入から利活用支援までを一貫して行う「クラウドサクセスサービス部門」を1月に新設。企業のビジネス変革を支援するサービスパッケージ「RISE with SAP」を軸にクラウド転換を推し進める。
パソコン(PC)やサーバーなどで高い販売シェアを誇るデル・テクノロジーズは、中小企業向けソリューションやサポートなどのビジネス戦略を強化している。新たに、従業員100人以下の企業が抱えるテレワーク環境整備やセキュリティー、災害対策といった課題に対応するパッケージを用意した。
シスコシステムズは、自宅でもオフィスでも仕事ができるハイブリッドワークを支援するために設計された新技術を市場に投入。プライベートクラウドとパブリッククラウドを接続するハイブリッドクラウドや人工知能(AI)を活用したIoTの導入などをサポートする。
日本市場での足場固めには国内IT各社との連携が欠かせない。米ソフト大手レッドハットの日本法人は、同社製品を使う最上位のパートナー企業との協業強化に向けた支援プログラムを創設。伊藤忠テクノソリューションズ、NTTデータ、NEC、日立製作所、富士通の5社を日本で初めて認定し、連携を強化しながら日本市場でのサービス拡大に攻勢をかける。
PC大手のレノボ・ジャパンも、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズとともに、販売代理店とのパートナー制度を再編し、PCやサーバーの販売支援プログラムを統合した「Lenovo 360」を立ち上げた。両社の販売部門を統合した組織「パートナー事業本部」を新設して窓口の一本化を図り、専任担当者が横断的にサポート。サービスを含めてトータルに提案することで差別化を図りたい考えだ。