2022.05.12 大手電子部品メーカーの業績拡大続く今期は2兆円企業も誕生へ
日系大手電子部品メーカーの業績拡大が続いている。5月11日までに発表した電子部品メーカー主要8社(TDK、日本電産、京セラ、村田製作所、ミネベアミツミ、日東電工、アルプスアルパイン、ローム)の2021年度(22年3月期)連結決算は全社が増収・営業増益となり、うち7社は売上高・営業利益ともに2桁増となった。半導体・材料不足の長期化やサプライチェーンの混乱、コロナ感染再拡大などの不安定な環境下でも、好業績を確保した。ミネベアミツミの連結売上高は初めて1兆円を突破し、日本の電子部品メーカーとして5社目の1兆円超え企業となった。22年度(23年3月期)は初の連結売上高2兆円超え企業も誕生する見通しだ。
21年度の各社の業績をけん引したのは、自動車や産業機器、ICT(情報通信技術)関連など。中でも産機関連は、企業の設備投資増大を背景に、FA機器や半導体製造装置向けなどの部品需要が年間を通じて好調に拡大した。自動車も、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)をキーワードとする車の電子化・電動化が電子部品需要をけん引。ICT関係は、半導体不足などによりスマートフォンの世界生産台数が20年比で減少した中でも、高機能な5G(第5世代移動通信規格)スマホの需要が着実に増加し、高性能な電子部品需要を押し上げた。ウエアラブル端末の生産増も部品需要に貢献した。部品ユーザーのBCP(事業継続計画)在庫積み増しも部品受注額を拡大させた。
収益面では、原材料価格高騰や物流費用増加、21年夏場のASEANロックダウンや22年3月以降の中国ロックダウン、さらにロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクの高まりなど多くの逆風が吹いたが、増収効果や各社の構造改革進捗、円安効果もあり、収益性が改善した。
22年3月期の連結売上高は、6社(日本電産、TDK、京セラ、村田製作所、ミネベアミツミ、ローム)が過去最高を更新した。ミネベアミツミは初の売り上げ1兆円超えを達成。ロームは、過去最高だった01年3月期の売り上げを21年ぶりに更新した。
23年3月期連結業績見通しも全社が増収かつ営業増益を計画する。電子部品市場を取り巻く環境は、半導体・部材不足の長期化によるセット生産への影響や、中国でのロックダウン長期化懸念、インフレ加速による部材や物流費増大など多くの懸念が顕在化しているが、各社の積極姿勢に変化はみられない。
23年3月期の連結売上高予想は、TDK、日本電産、京セラの3社がともに、日本の電子部品メーカーとして初の2兆円到達を見込む。
(5月13日付電波新聞・電波新聞デジタルで詳報します)