2022.05.17 完全電化の内航船、お披露目 再エネ電力で航行大容量のリチウムイオンバッテリーを装備 e5ラボや旭タンカーなどが開発

EVタンカーの「あさひ」

川崎港に設置された給電基地川崎港に設置された給電基地

あさひの船内のバッテリー室あさひの船内のバッテリー室

 航行などを完全に電化したEVタンカー「あさひ」が竣工し、お披露目された。4月下旬から、東京湾で重油を積んで給油する作業に従事している。船舶のEV化などを手掛ける「e5ラボ」(東京都千代田区)などが開発。EVタンカーは世界初という。

 あさひは全長62メートル、幅10.3メートルで、総トン数は492トン。約1280立方メートルのタンクを搭載しており、重油を輸送し約10ノットで航行する。

 大容量のリチウムイオンバッテリー(容量3480kWh)を装備。バッテリーから供給される電気でモーターを駆動させる。特徴は、航行や積み荷の積み降ろし、停泊中などに必要な全ての電力を、陸上から給電される電力で賄えることだ。

 ノルウェーには電気で動くフェリーなどもあるが、こうした国内の内航船は初めて。バッテリー内の電気がなくなった際に使う、石油燃料の発電機も搭載しているという。

 川崎港(川崎市川崎区)に設置した給電基地からケーブルをつないで、夜間を中心に約10時間でフル充電が完了する。6時間ほど継続して運転し約100キロメートルを航行できる。あさひは、再生可能エネルギーに由来する電力を充電しており、ゼロエミッションを実現しているという。

 旭タンカー(東京都千代田区)や商船三井などが2019年8月にe5ラボを設立し、EVタンカーの共同開発に向けて動き出した。

 あさひは3月下旬に竣工。東京湾沿岸の石油元売り企業の製油所で船舶燃料の重油を積み、湾内に停泊中の大型船舶などに届けて給油するのを繰り返す。

 旭タンカーでは、23年3月に同種の船舶をもう1隻作る計画だ。旭タンカーの担当者は「普及に向けては、バッテリーの性能や、給電設備を陸上に造るという点で課題がある」と話している。