2022.06.14 出光興産やINPEXなど秋田・湯沢に地熱発電所規制緩和受け国定公園に初の新設

かたつむり山発電所での試験の様子

 石油元売り大手の出光興産は6日、石油開発国内最大手のINPEX、三井石油開発の3社で、秋田県湯沢市に地熱発電所「かたつむり山発電所」の建設を決定したと発表した。出力は1万4990kWで、2027年3月の運転開始を予定。規制緩和で開発できるようになった国定公園内で初めての新設となる。3社は、より環境や景観に配慮し、森林になじむ設計や建設に取り組む方針で、今後のモデルとして全国から注目を浴びそうだ。

 発電所が建設されるのは、宮城県や山形県などとの県境にある湯沢市南部の小安地区。11年から調査に乗り出し、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の助成を受けて地下資源などの確認調査を継続してきた。

 3社は事業化が有望視されてきたことから、18年9月、調査などを担う小安地熱(東京都千代田区)を設立。出光とINPEXが42.5%ずつ、三井石油が15%を出資した。

 21年には約3カ月にわたり、蒸気や熱水の量など、生産力を確認する噴出試験を実施した。このデータから、安定した噴出量が長期的に見込め、事業化が可能だと判断した。6月に着工する。

 出光は既に大分県九重町で、九州電力などと共同で地熱発電事業を手掛けてきた実績がある。今回発電した電力は、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)で15年間、売電される。

調査段階から環境への配慮

 建設地周辺には県境にまたがる活火山の栗駒山があり、地下は地熱資源が豊富だ。中でも、湯沢市一帯では出力1万kWを超える大型の発電所開発が進み、国内最大の八丁原発電所がある大分県九重町や、岩手県八幡平地域と並ぶ地熱開発地となっている。

 湯沢市に開発が集中する背景には「地元が協力的」(日本地熱協会)な点があるという。東北電力が、上の岱地熱発電所を稼働させているほか、19年5月にはJパワーなどが国内で23年ぶりとなる大規模施設、山葵沢地熱発電所(出力約4万6200kW)の運転を開始した。東北電力グループは新たに木地山地熱発電所(仮称)の開発に向けて環境アセスメントなどの手続きを進めている。29年に稼働予定だ。

 かたつむり山発電所は、宮城、岩手、秋田、山形の4県境に広がる栗駒国定公園内に位置する。国が地熱開発を推進するため、12年から段階的に進めてきた規制緩和で、国定公園内などでも地熱の開発が可能になった。日本地熱協会などによると、自然公園法で国定公園などが設定される以前に建設された発電所はあるが、規制緩和後に新たに設置されるのは、かたつむり山が初めて。

 3社は調査段階から環境への配慮に努めてきたという。実際の建設に際しても、発電所の建屋を目立たないようにドーム状にしたり、建物の高さを13メートル以内に抑えて設計したりして景観に配慮する。予定地にあるブナの天然林も伐採せず、スギの植林地に建物を建てる。建物の表面塗装には森に隠れるようなデザインを検討しているという。

 出光興産は「優良事例の一つとしてモデルになるよう、今後の地熱開発を進めていく」としている。