2022.07.08 【電子部品技術総合特集】ハイテクフォーカスニチコン、情報通信機器向けアルミ電解コンデンサーの最新技術動向

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「GYFシリーズ」(写真1)

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「GYFシリーズ」(写真1)導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「GYFシリーズ」(写真1)

チップ形アルミ電解コンデンサー「UYAシリーズ」(写真2)チップ形アルミ電解コンデンサー「UYAシリーズ」(写真2)

基板自立形アルミ電解コンデンサー「LHTシリーズ」(写真3)基板自立形アルミ電解コンデンサー「LHTシリーズ」(写真3)

 

小型化、高温度、長寿命化に対応

 ■はじめに

 第5世代移動通信規格システム(5G)は、高速大容量、高信頼・低遅延通信、多数同時接続の特長を生かして自動運転の普及や遠隔医療の実現といった社会課題の解決につながることが期待されている。しかし、電波特性から一つの基地局でカバーできるエリアが狭い5Gでは、4Gと比較して多くの基地局設置が必要であり、今後のエリア拡大においては、メンテナンスが難しい場所や温度、湿度面で厳しい環境への設置も想定されている。

 このような背景から、5G基地局にはセット機器の小型化や、過酷な設置環境におけるメンテナンスフリーが要求されており、使用される部品にも同様に小型化や高温度・長寿命対応が求められている。これらのニーズに対応した導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー、アルミ電解コンデンサーの最新技術動向について解説する。

 ■導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー125度4000時間保証「GYFシリーズ」

 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは、誘電体皮膜を有する陽極箔(はく)と陰極箔の間にセパレーターを介して巻き取った素子に、電解質として導電性高分子と電解液の2種類を採用している。導電性高分子の導電機構は電子電導であり、イオン電導のみである電解液と比較して電導度が約1万倍と非常に高いため、低ESRかつ高リプル電流化が可能となる。また、導電性高分子に適した電解液を適用することで、アルミ電解コンデンサー並みの低漏れ電流性能が可能となる。

 すなわち、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは、電解質が導電性高分子のみの導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーと、電解液のみのアルミ電解コンデンサー双方のメリットを有したコンデンサーであることから、特に負荷変動が大きく、高リプル電流化ニーズの高い車載用途において需要が拡大している。

 当社では125度4000時間保証の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「GYAシリーズ」を2017年にラインアップ。21年にはGYAシリーズからワンランク高容量化となる「GYEシリーズ」を量産化。今年度からはGYEシリーズからさらにワンランク高容量化を図った「GYFシリーズ」を量産開始する(写真1、表1)。各シリーズのφ6.3×7.7L、φ8×10L、φ10×10Lサイズは耐振動構造にも対応している。

 ■チップ形アルミ電解コンデンサー125度5000時間保証「UYAシリーズ」

 5G基地局用途では、小型で高耐熱、長寿命なアルミ電解コンデンサーが求められており、当社は125度5000時間保証チップ形アルミ電解コンデンサー「UYAシリーズ」をラインアップし、量産対応している(写真2)。アルミ電解コンデンサーは使用に伴い内部の電解液が蒸散していき、電気特性変化を生じる。

 UYAシリーズは電解液に低蒸散性溶媒を適用することで電解液の蒸散量を改善し、現行品では3000時間であった保証寿命をおよそ1.7倍まで長寿命化した。

 ■基板自立形アルミ電解コンデンサー125度3000時間保証「LHTシリーズ」

 現在ラインアップしている105度3000時間保証「LGNシリーズ」に対し、高温度対応となる125度3000時間保証「LHTシリーズ」を製品化した(写真3)。大型アルミ電解コンデンサーとして業界最高温度レベルとなるLHTシリーズは、漏れ電流を抑制した高温高信頼電極箔や、電解液保持量の高い電解紙といった要素技術を最適化して採用している。

 大型アルミ電解コンデンサーは、太陽光、風力発電などの再生可能エネルギー分野、EV用車載充電器などの自動車分野、工業用ロボットやFA機器などの産業機器分野、5G基地局やデータサーバーなどの情報機器分野といったさまざまな分野で採用されている。

 その中でも情報機器分野では、過酷な設置環境を想定した防じん対策による電源ファンレス化や筐体(きょうたい)密閉化、ユニットの小型化に伴う部品集積の高密度化といった背景により、セット内温度の上昇に対応可能な高温度化が求められている。

 LHTシリーズは、高温度環境下において安定した耐久性を有していることに加え、現行のLGNシリーズと同等サイズで製品化を実現していることにより、セットの小型化や長寿命化を図った回路設計時にも最適なアルミ電解コンデンサーとして幅広い活躍が期待できる。

 ■今後の展望

 情報通信機器は、新型コロナによる昨年度のIT特需や5Gによる高速通信、それによるIoTの拡大など、成長の期待できる分野である。5G基地局で使用される部品は今後も小型化、高温度、長寿命化が求められ、それらに対応することでメンテナンスフリーに寄与できると考えている。当社は今後もお客さまの期待に応え、さらなるファンづくりのために、さまざまな要求に最適なコンデンサーを提供できるよう、開発を促進していく。

 〈筆者=ニチコン〉