2022.07.19 遠隔診療向けの「箱」お目見えオリバーや東芝など、患者と医療者支援に開発中
遠隔診療BOXで表示される画面のイメージ(上)と、非接触の画面の例(手前)
コロナ禍の中、新しい診察手段の一つに広がる「遠隔診療」。少子高齢化や医師の偏在化、医療費の高騰を受け、その需要がますます高まっている。ただ一般に、個人でデバイスやシステムを用意して、スマートフォンと連携する医療機器との接続・設定を行うプロセスが必要。また、自宅以外の場合のプライバシー確保など多くの課題がある。
それらを解決し、新しい価値を提供する目標を掲げるツールがお目見えした。名古屋大学や、インテリアなどを手掛けるオリバー、東芝グループをはじめとしたコンソ―シアムが開発中の「遠隔診療BOX」。センシング技術などを駆使してさまざまな機能を盛り込み、プライバシーも守る。来年の実装をめざしている。
東京ビッグサイトで今月あった「国際モダンホスピタルショウ2022」で、実機が一般向けに初めて披露された。中の椅子に座って画面に向き合う人たちの姿が見られた。非接触の画面も準備。体の中の構造などの画面がデモされた。
電話ボックスほどの大さで、内部には、人工知能(AI)を活用した健康サポートアプリケーションや、各種デバイスをシームレスにつなぐIoTゲートウエイを備える。バイタルデータなどもすぐ共有され、感情分析を活用して、受診者が緊張していないか、説明に納得しているか、といったことをつかみながら、医師がつかみながら話すといったこともできる。
診察の現場では、絵や図などを使って受診者に説明する場面も多いが、そうしたデータを準備することで、よりコミュニケーションをしやすくする。文字のログを残して共有するといったことも想定される。
こうしたツールを職場に置けば、例えば、医療機関にかかるために休暇をとる、といった代わりに、休み時間を活用するなど、手軽に医療を受けられる可能性もある。また、駅や空港といった公共スペースに設置することも想定されそうだ。
コンソーシアムに参画している名古屋大の大山慎太郎准教授は「遠隔診療は、時間・場所の制約を受けないといった面が注目されがちだが、対面診療の単なる『置き換え』ではなく、新しい付加価値を提供できるポテンシャルがある。こうしたソリューションを通じて、患者満足度を高める『ペイシェントエクスペリエンス』を実現したい」。
これらのデバイスを活用すれば、日本国内の医師と海外の患者をつなぐことも容易になり、「レベルが高い日本の医療を輸出する一助になる可能性もある」と展望する。
(20日付電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)