2022.07.28 【半導体/エレクトロニクス商社特集】半導体需要を底上げする主要分野の動向

トヨタのFCEV「MIRAI」のECU基板

国内外で産業用ロボットの需要が拡大国内外で産業用ロボットの需要が拡大

 半導体需要を底上げするEVでは車1台当たりに搭載される半導体量が急増し、DXではデータ通信量の増大でデータセンター向け先端ロジックデバイスの需要が増加。スマートファクトリーの進展はロボット産業も拡大し、センサーからマイコンまでさまざまな半導体需要をけん引する。

EV 電動化で1台当たりの搭載数急増

 自動車の電動化で車1台に搭載される半導体量は急増。平均的な電気自動車(EV)は従来の車両の2.9倍もの半導体売上高を生み出している。

 英調査会社オムディアによると、2021年の内燃機関自動車1台当たりの半導体平均収益が664ドルだったのに対し、バッテリー式のEVは1600ドルに上った。車載用半導体の21年世界売上高は前年比28.6%増の516億ドル。ハイブリッドおよびEVによる収益は65億ドルで前年から72.1%増加した。

 厳しい排出規制基準とゼロエミッション車の需要の高まりで、今後さらにハイブリッド・EVのニーズは増大し、車載半導体市場をけん引する。

 車にはMCU(マイクロコントローラー)、プロセッサー、センサー、パワー半導体などが使用される。

 注目は、省エネの切り札となる炭化ケイ素(SiC)を材料としたパワー半導体。大幅な需要増をにらみ、主要ベンダーが増産投資に乗り出している。

 半導体需要を底上げするEVでは車1台当たりに搭載される半導体量が急増し、DXではデータ通信量の増大でデータセンター向け先端ロジックデバイスの需要が増加。スマートファクトリーの進展はロボット産業も拡大し、センサーからマイコンまでさまざまな半導体需要をけん引する。

DX デジタル化進展でDC向けなど拡大

 主要国を中心に、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資が拡大している。

 あらゆる領域でのデジタル化の進展と5Gサービスの本格化でデータ通信量は増大し、これを処理するデータセンター(DC)向けにCPUやGPUといった先端ロジックデバイス、大容量メモリーの需要が拡大。

 DX関連の半導体は現在、世界市場の25%ほどだが、30年には60%程度にまで高まると予想されている。

 チップの高性能化、低消費電力化に向けて微細化とパッケージング技術の高度化が進み、製造装置や素材メーカーに新たな商機をもたらしている。

5G/6G 端末と通信設備両面で需要増加

 第5世代移動通信規格5Gの導入が加速し、端末と通信設備の両面で高性能チップの需要が増加している。

 スマートフォン用では頭脳の役割を担うアプリケーションプロセッサーの開発競争が激化。ハイエンドからローエンド向けまで多種多様なチップが投入されている。無線通信や信号を制御するベースバンドチップでは高周波数帯のミリ波対応が進展しつつある。

 30年ごろの実用化を目指す、5Gの次の移動通信規格6Gでは、テラヘルツ波のようなさらに高い周波数帯の利用が検討されており、これに対応する半導体デバイスの研究開発が課題だ。

 さらに、5Gや6Gによって実現される自動運転や遠隔医療、メタバースなど新たなアプリケーションが半導体需要を一層喚起し、市場の伸びを支えていくと期待される。

スマートファクトリー センサーからマイコンまで牽引

 スマートファクトリーの進展はセンサーからマイコンまで幅広い半導体需要をけん引する。同ファクトリーはIoTやM2M技術を活用した生産システムで製造業の生産性を革新的に高め、最終的には工場の無人化、全自動生産化を実現する。

 製造設備のコンポーネントの情報を収集するセンサーは、単に測定値を出力するのではなく、多様な解析を行った結果も発信するモジュール開発が進む。

 製造設備を構成する個々のコンポーネントにはRFIDなどによる個別の製造情報や使用情報が出荷時や稼働時に記録され、装置内で管理される。これらの情報が高速でリアルタイムな装置内フィールドバスなどのネットワークや無線センサーネットワークを介し、装置コントローラーで管理される。

 装置コントローラーで装置内の状態を把握する異常検知や予測の情報は工場のシステムに連動し、自動的に部品交換のためのアクションがサプライヤーへインターネット経由で通知されるメンテナンスシステムが既に稼働している。

ロボット産業 人手不足などで導入機運が高まる

 人手不足にコロナの非接触ニーズも加わってロボットの需要が拡大している。

 国連によると、世界の人口は現在の約億人から、インド、ナイジェリアなどでの増加で50年には100億人近くに達するという。一方、日本では毎年約60万人ずつ減少しており、このままでは50年に1億人を切ると予測されている。

 中国や欧州でも日本と同じ現象が起きている。こうした人手不足に対応するため、ロボット(産業用、サービス用)の導入機運がますます高まると予想される。

 ロボットには回転部分などメカニカルな部品が多用されるが、ロボットアームのセンシングをはじめ制御などには半導体技術が不可欠で、半導体需要を底上げする。