2022.08.18 SAR衛星、小型化で打ち上げコスト低減高分解能で観測、災害対応に活用

Synspectiveの小型SAR衛星「StriX」。打ち上げ時の大きさは70㍍四方だが、宇宙空間では約5㍍のアンテナを展開する

QPS研究所が10月に打ち上げる予定の「QPSーSAR」の3号機。分解能46センチメートルを実現したQPS研究所が10月に打ち上げる予定の「QPSーSAR」の3号機。分解能46センチメートルを実現した

 電波の一種であるマイクロ波を使って地表面を観測するSAR(合成開口レーダー)衛星の開発競争が活発化している。

 地上約500キロメートルの低軌道に複数個のSAR衛星を周回させて地上データをほぼリアルタイムに取得・分析することで、災害対応やインフラ施設の異常検知などに応用することが期待されている。

 小型SAR衛星の質量は100キログラム級と大型機に比べ10~20分の1。アンテナの改良などで大幅な小型化が可能となった。打ち上げコストも低減でき、実用化に弾みが付いた。

 短波長のマイクロ波のうち、小型SAR衛星で使われるのは「Xバンド」と呼ばれる8~12ギガヘルツの周波数帯。帯域幅が広く、高分解能高画質で観測できる。

 衛星から地表に向けてマイクロ波を照射。反射したマイクロ波を受信して地表のデータを取得する。

 視認性が低下する夜間でも観測でき、マイクロ波は雲を透過するため天候の影響を受けない。得られた画像は立体的でさまざまな解析データとして利用が想定される。

 各社は多数個の衛星を協調動作させる「コンステレーション」と呼ばれるシステム構築を目指す。

 実現すれば、同じ場所の観測データを時間差で比較することで地表の変位をきめ細かく測定できる。

 現在、SAR衛星で取得した地上データを活用したデータビジネスの展開が模索されている。
(19日付の電波新聞・電波新聞デジタルで詳報します)