2022.08.26 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<99>アジャイルによるDX推進者の早期戦力化①
筆者が初めてエンジニアとして海外出張したのは、たしか入社2年目だったと記憶している。その頃はまだTOEICのスコアが200点台だったので、英会話がほとんどできない状態だった。
最初の出張先はジャマイカだったが、乗り継ぎのニューヨークまではアメリカ出張予定の先輩に同行してもらうことを条件に、単独渡航が決まった。
成田空港を離陸した航空機の機内で外国人の客室乗務員から「Beef or Chicken?」と機内食の選択を促されたとき、ポカンとしていた筆者を見かねて先輩が通訳してくれたことを覚えている。
それでも何とか目的地に到着した筆者は、現地人ユーザーたちと片言の英語で常時コミュニケーションしながら納入システムの現地調整を始めた。
間違いだらけの英語を臆せず喋る日本人に情け心を抱いたのか、彼らは嫌な顔一つ見せず言い回しや発音の間違いに対する訂正をフィードバックしてくれた。筆者もそれを素直に受容しておうむ返しした。そして2カ月にわたる現地調整の最終日、同じホテルに宿泊していたアメリカ人から「君、英語うまいね」と言われるまで上達していた。
さて前回は、昨今のビジネス環境の激しい変化に対応していくために、全従業員に「DXリテラシー教育」を受けてもらい、自社のビジネス変革に対して高い志を持つデジタルトランスフォーメーション(DX)推進者を募るところまで話した。
特に、止められない生産設備をデジタル化する場合、ワイヤレスでデータを収集するIoTや、高精度にデータを分析するディープラーニングなどの人工知能(AI)だけでなく、大容量データを高速かつセキュアに転送する信頼性の高いローカル5Gの導入も検討する必要がある。
自ら志願したDX推進者たちは、成長マインドセット(自分の能力は努力で成長するという考え方)を持っているはずだから、これらのデジタル技術のうち一つくらいは自主的に学習しているとは思う。しかし、全ての技術について十分な知識を持っているわけではないため、協創するにもお互いの専門用語が理解できないといった問題が出てくる。
早期戦力化が鍵
彼らは現場のビジネスとその課題を熟知しているものの、データサイエンスを含めた広範囲なデジタル技術を活用して課題解決できるようになるには、少なからず時間がかかってしまうのが実情だろう。とはいうものの、ビジネス環境の急激な変化に対応する変革にはスピードが求められるため、DX推進者の早期戦力化こそが重要な鍵となる。
そこで登場するのが〝Agile〟だ。イギリス英語では「アジャイル」、アメリカ英語では「アジル」と発音する。「素早い、俊敏な」という意味で、以前は市場機会を素早く利益に変換する経営戦略を〝アジル経営〟と言っていた。最近はアジャイルを使うことが増えているが、「環境の変化に対して、俊敏に対応する」という意味で使われることが多い。
海外で実証済み
そこで最近、社内DX推進者の早期戦力化に効果があると言われているのが〝アジャイル学習〟だ。一言でいえば、「オープンかつ柔軟なコミュニケーションを通して常時フィードバックを受容しながら知識を習得すること」だ。これは、筆者の初めての海外出張で実証済み。次回は、その方法を詳しく見ていく。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉