2022.08.31 【エンターテインメント特集】テイチクエンタテインメント 栗田秀樹社長に聞くコロナ禍のレコード市場取り組み

デジタル化を加速、大きな柱を大切にKPOPなどにも力

 テイチクエンタテインメントの新社長に4月1日付で栗田秀樹氏が就任した。栗田氏は、カラオケ事業などで知られる「エクシング」出身。2015年にエクシングがテイチクエンタテインメントを子会社化した当時から、両社のシナジーを生む業務に当たってきた。コロナ禍でレコード市場も過渡期を迎えた今、どう歩みを進めるのか。栗田社長に話を聞いた。

 -社長就任後、約5カ月が経ちました。

 栗田社長 15年からカラオケ事業の立場としてテイチクの業務にも関わっていたが、デジタル化が進んでいることに驚いた。社内にスタジオがあり、コンテンツを配信している。デジタルコンテンツとプロモーションの両輪で取り組む姿が印象的だった。

 -21年のレコード市場は、CD販売は前年並みでしたが、配信は8年連続で成長しています。

 栗田社長 ジャンルによってシングルCDか配信か選択している。演歌歌謡曲やアイドル系はイベントで販売する関係でCD化する。中でも、演歌歌謡曲では「追撃盤」としてシングル表題曲はそのままに、カップリング曲を変更したものを発売している。

 一方で、シンガーソングライターやバンドのシングル曲は配信している。レコード会社としては、CD販売の方が慣れているため、やりやすさもあるが、リスナーの音楽の聴き方が変わった。CDプレーヤーを持たない人も増えているため、対応しなければならない。それでも、特にアイドルのファンはグッズ・モノとして所有したいと考える人も多く、CDの需要がある。アナログLPもグッズ感覚で一定の人気があるため制作している。

 -SNSで音楽の流行ができる時代、楽曲制作にも変化はありましたか。

世代超えて楽しむ

 栗田社長 イントロや間奏が長いものは聴き飛ばされてしまいやすい。スタイルの変化は受け入れざるを得ない。歌から始まる楽曲が増えているが、いい曲はどんな環境で聴いても良い。トレンドは意識しながらも、いい曲を作って届けるという気持ちは何も変わっていない。演歌歌謡曲は根強く聴いてもらえている。

 「大人の音楽」として「LIFE and MUSIC」レーベルを新設した。子どもから大人まで、世代を超えて楽しんでいただける音楽を届ける。

 -創立88年。90年に向けてどのように歩みを進めますか。

 栗田社長 歴史がある。石原裕次郎さんをはじめ、石川さゆり、綾小路きみまろ、BEGINなど幅広いアーティストがいる。演歌歌謡曲は大切な一つの柱で誇るべきこと。

 現在は、真田ナオキや青山新など若い男性アーティストが人気を集めており、アイドルのような手法も取り入れている。今後は大きな柱を大切にしながらKPOPやアイドル、バンドといったジャンルも力を入れ、デジタル化を加速させる。

 ライブイベントは、最大限のコロナ感染対策を行った上で音楽を届けている。少しずつ再開しているが、皆さまがルールを守って楽しんでいる様子が印象的。演歌歌謡曲のアーティストは、ステージのオンライン配信にも力を入れている。徐々にファンもなじんでいる様子だ。新しい取り組みは必要だが、ファンとともに進むことが大切だと考えている。

 ECサイトでCD販売やネットサイン会の受け付けなどをしているが、不慣れな方も多い。あえて電話窓口も設けて対応している。応援してくださるファンを見捨てることなく寄り添うこともわれわれの任務だと考えている。

 -エクシングとのシナジーはどのように強化していきますか。

コラボで認知度向上

 栗田社長 エクシングのカラオケ事業「JOYSOUND」では、アーティストとのコラボ企画を行うことで、楽曲の認知度も上がる。また、直営店もあるため、ポスターやチラシを大々的に展開できる。テレビなどメディアでの宣伝も重要だが、プラスアルファのプロモーションができる。まだまだ実験的な取り組み段階だが、グループ会社全体を巻き込んで活動できることは大きな強みだ。

 新人発掘も大事な業務。SNSも大切な発掘の場だが、カラオケ事業と密に情報交換をすることで有望な人材をいち早く見つけることができる。カラオケの特長を生かした、踏み込んだシナジーが生まれることも期待している。

 さらに、エクシングの親会社「ブラザー工業」はプリント技術に優れている。社内に加工機を導入したことで、レーザーマーカーでアルミケースに印字したグッズやプリントTシャツなどアーティストグッズを少数でも生産できる。小回りが利くグッズ生産が可能になったことで、アーティストのプロモーションチャンスも増え、ファンにも喜ばれる。これからもグループ会社の強みを存分に発揮していく。