2022.10.12 【日本ロボット工業会創立50周年特集】電機・電子機器の製造の変遷 日本の表面実装技術が世界をけん引

パナソニック 1968年アキシャルリード型電子部品挿入機1号機「パナサートA」

FUJI 1978年開発初期の実装機FUJI 1978年開発初期の実装機

JUKI 1994年半自動スクリーン印刷機KS-180JUKI 1994年半自動スクリーン印刷機KS-180

2010年頃の実装ライン2010年頃の実装ライン

スマートファクトリー推進 工場の無人化実現へ

 表面実装技術(SMT=Surface Mount Technology)や同技術による製造装置は電子部品実装ロボットとして、日本ロボット工業会の50年の発展を支えてきた。日本の表面実装技術は世界の電気・電子機器の製造をけん引し、高品質なものづくりを目指してさらなる進化を続けている。

産業革命の変遷

 産業革命の世界の歴史を振り返ると、18世紀の第1次産業革命は紡績機に代表される軽工業の機械化から始まり、19世紀半ばから20世紀初頭の第2次産業革命は石油燃料を用いた重工業の機械化・大量生産化の時代へ。日本の産業革命が起こり、製造業の近代化が進み始めるのは20世紀に入ってからになる。

 第3次産業革命はコンピューターの登場によってもたらされた。1946年に米国で生まれた真空管式のコンピューターが発展し、ものづくりの現場に普及し出したのが70年代のこと。そして産業用ロボットが登場し、運搬・溶接・検査といった人間の作業の代替が可能になった。

 今は第4次産業革命のさなかにある。人工知能(AI)・IoTなどを活用し、より高度な知的活動の自動化を実現する。従来人間しかできなかったような生産管理や設計、デザインといった領域までロボットができるようになる。

 第5次産業革命についても予測がなされている。コンピューター技術とバイオテクノロジーが融合し、人体や環境に優しい革命的な工業製品を実現する技術が研究されている。

電気・電子産業の歴史

 戦後から60年にかけては真空管の時代で、全てがアナログ技術だった。55年ごろにトランジスタが登場し、その後半導体やICが開発され、電気、電子機器がアナログからデジタルへと移っていく。

 90年代に入り、さまざまなAVや通信機器が登場し、実装技術が大きく進化。16対9のワイドテレビ、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタル携帯電話、ノートパソコン(PC)などパーソナル化された製品の需要が一気に拡大した。

 プリント基板は片面から両面、多層へと進んできたが、多様なAV製品の登場で、ビルドアップ基板や部品内蔵基板が用いられるようになり「高密度化」の先駆けになった。

 2000年代に入るとテレビがブラウン管に代わり液晶やプラズマが登場し、中国や韓国勢が台頭する。DVDレコーダー、BDレコーダー、携帯型デジタル音楽プレーヤーなどデジタル機器が相次いで登場し、一気にデジタル化を加速した。特にスマートフォンの登場は製造プロセス、製造技術の劇的な変化をもたらした。

実装技術

 トランジスタが登場したころに、アキシャルリード部品用自動搭載機(挿入機)が開発され、後に現在の表面実装技術へと進化していく。FUJIは78年、パナソニックは80年、ヤマハ発動機、JUKIは87年に実装機を発売し、電気・電子機器の生産に重要な役割を果たす電子基板の製造方法は大きく変わった。

 製造する製品もテレビはブラウン管から液晶へ、音楽メディアは磁気テープからディスクへ、カメラもフィルムからデジタルに変わり、さらにPC、携帯電話、スマホとデジタル製品が登場。いまや市場もグローバルへと拡大し、変種変量生産へと生産形態を変革してきた。

 戦後から始まったFA(ファクトリーオートメーション)として、生産の自動化が大きく進むのは65年ごろ。ICが登場し、工作機械に組み込まれたことにより、第1世代ロボットともいわれる産業用ロボットが実用化された。

 日本は今後、ますます少子高齢化が進み「世界の工場」を標ぼうしてきた中国も20年後には超高齢化社会を迎える。「ものづくり」にロボット活用の機運はますます高まる。

 IoT化が進む中で、ドイツが提唱する第4次生産革命「インダストリー4・0」に端を発して、製造業のIoTを活用した生産システムの導入が進んでいる。インダストリー4・0を具現化するため、実装機各社はIoT、AIなどの技術と組み合わせ、装置と装置をつないでデジタルデータをやりとりすることで、人手を介さず装置自体が自己完結型の生産を実現する「スマートファクトリー」を推進する。

 生産ラインの装置間でデータをやりとりすることで、段取り替えの指示や不良発生時のトレーサビリティーなどを自動化して生産効率を格段に高める。生産フロア全体、工場全体へと拡大し、世界の工場をインターネットにつなぐことで、東京のオフィスで世界の工場の稼働状況が一目で確認できる。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた惑星探査機「はやぶさ2」が地球から約3億キロメートル離れた小惑星リュウグウに到達し、高度なプロセスを無人でこなしながら試料を採取する光景がテレビ映像などで紹介された。スマートファクトリーが目指す究極のものづくりのイメージは、はやぶさ2に似る。

 工場の無人化は、コスト面や雇用創出の面など議論は避けられないが、製造業の中長期的視点から、もはや「夢の工場」ではなくなってきた。