2022.10.12 【日本ロボット工業会創立50周年特集】表面実装ラインM2M通信規格「SEMI SMT-ELS」 グローバルスタンダードめざす

日本ロボット工業会「SEMI SMT-ELS」をグローバルスタンダード」に(6月の実装プロセステクノロジー展)

 日本ロボット工業会は、実装各社のスマートファクトリーの推進に伴い、表面実装ライン(SMTライン)のM2M通信スタンダード「SEMI SMT-ELS(イーエルエス)」のグローバルなデファクトスタンダードを目指して普及活動に取り組んでいる。

 SEMI SMT-ELSは、日本ロボット工業会と半導体国際業界団体SEMIが共同で2018年6月に制定したもので、メーカーの垣根を越えて異なった印刷機、実装機、基板検査機などが存在する表面実装ラインの通信ルールを標準化して、オープンな接続環境を構築する。

 世界の市場占有率80%を占めるFUJI、ヤマハ発動機、パナソニック、JUKIの実装機4社が手を組み、日系検査機企業や台湾、韓国などの主要なSMT関連メーカー約20社が参画し、国際標準に拡大すべく現地企業と連携した海外展示会の出展などに取り組んでいる。

 SEMI SMT-ELSは、SMTラインではM2M通信で「情物一致」による製品と情報の同時搬送を基本としてフィードフォワード、フィードバックを行うなどSMTライン、ローカルホスト、ファクトリーホストの三つの階層の管理に対応している。

 工場などユーザーに装置導入の際、メーカーを問わず自由に装置を選ぶことができ、導入・設置時に異なる通信仕様をマッチングさせる手間やコストを削減できる。既存の機器にも対応できるため、現有資産を活用したスマート化が実現できる。

 SMT装置メーカーは、各周辺機器とのM2M接続が容易になり、設置サポート作業の手間とコストの削減につながる。自社提供のローカルホストが他社混在ラインに対応可能となり、その価値を高めることができる。周辺装置メーカーは、SMT装置メーカーごとに異なるプロトコルを多数開発・実装する必要が無くなる。

 同工業会が3年ぶりに開催した今年6月のSMT関連「実装プロセステクノロジー展」でも、会場にJARAブースを設け「JARA50周年特別展示」として、ELSを実機による実装ラインを展示した。

 10社の各設備とソフトウエア製品をELSでつないだSMTライン実機デモ展示により、生産ライン各装置の横方向通信、ホストとの縦方向通信の連携を公開し、多くの来場者がブースを訪れていた。

 米国や中国などで開催される実装系の展示会にも同工業会として出展し、グローバルスタンダードを目指した活動を行っている。

 日本発が国際標準を目指したケースは過去にも多く、代表的な例ではアナログハイビジョンにおけるMUSE方式、デジタルHDTV放送のISDB-T方式、移動体通信のCDMA方式などがある。しかし、いずれも日本は主導権を握れなかった。

 世界の市場占有率80%を占める日本の実装機業界が団結したSEMI SMT-ELSは、グローバルスタンダード化の期待が高まっている。