2022.12.02 【年末照明特集】IoT対応など普及加速へ、年末商戦は付加価値製品を軸に訴求

年末は照明にとっても商戦期の一つとなる

年末は照明にとっても商戦期の一つとなる年末は照明にとっても商戦期の一つとなる

照明にも「癒やし」を求める傾向は強まっている照明にも「癒やし」を求める傾向は強まっている

 照明業界が、IoT対応など付加価値照明の普及拡大に向けて本腰を入れ始めた。これまでも重視してきたことではあるが、普及加速を目指した新たな情報発信の戦略を10月に発表。業界を挙げて取り組む姿勢を改めて示した格好だ。照明各社もこうした動きに呼応し、年末商戦でも付加価値照明を軸に訴求を強めている。

 日本照明工業会(JLMA)が10月19日に東京都内で開催した発表会。報道陣を集めた大掛かりな会見は珍しく、発表内容を前に会場は期待に包まれた。「2030年に向けた新たなコミュニケーション戦略を発表する」。会見に臨んだ島岡国康会長は冒頭、こう宣言した。

 2050年に国が実現を目指すカーボンニュートラル(脱炭素)の前段階として、30年には温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減する目標が掲げられている。JLMAはこの目標達成に貢献するために、明かりの質向上や省エネ性、IoT化による効率的な制御などで、快適と省エネを両立する付加価値照明の普及スピードを加速する方針を以前から示してきた。

 そうした方針の下、これまで掲げてきたのが「CSL&HCL」だ。CSLは「コネクテッド・スマート・ライティング」、HCLは「ヒューマン・セントリック・ライティング」の略。ロゴを作って訴求してきたものの、「日本国内では浸透しなかった」(島岡会長)ことで、情報発信の仕方を見直してきた。

 そうした状況を打開するための一手が、Society5.0(超スマート社会)に歩調を合わせる形とした「Lighting5.0」。CSL&HCLに代えて付加価値照明の新定義にすると同時に、新たな情報発信戦略「LIGHTING ACTION for 2030」を策定した。アクションでは、Lighting5.0の推進とともに、異業種との交流を図り、共創や新ビジネスのきっかけづくりにも取り組む。

SNSなど情報発信

 アクションの第1弾として、12月7日から開催される環境総合展「エコプロ2022」に出展。また、アクションを紹介する特設サイトの開設や、SNSを活用した情報発信にも力を入れている。

 照明各社もIoTをはじめとする付加価値照明の展開には力を入れている。コロナ禍でおうち時間が増えたことにより、家庭内で「くつろぎ」や「癒やし」を求める傾向は一層強まった。その空間演出に照明は不可欠な要素。明かりの質の向上だけでなく、生体リズムに合わせた調光調色、ネットワーク連携による演出など、エンターテインメント性と合わせ、照明の価値が高まっている。

 JLMAの統計では、今年度上期(4~9月)のLED照明の出荷台数は前年同期比3.4%伸びた。コロナ禍で工事などが延期・中止され、一時的に落ち込んだ非住宅分野も今年度は顕著に復調している。巣ごもり需要の効果もあって持ち直しが比較的早かった住宅分野は出荷台数が同1.8%増とLED全体に比べると微増にとどまるが、Lighting5.0に即した付加価値照明の出荷構成は23%とLED全体(19.4%)を上回る。

 住宅照明は、快適な住環境の実現に直結するだけに、付加価値照明への関心は高く、照明各社もSDGs(持続可能な開発目標)に配慮した照明器具など、エコ素材を使用した製品も開発。光るだけでない訴求も始まっている。

 今はLED照明が主流の時代。それが蛍光灯だったつい10年ほど前までは、年末は古くなった照明の買い替え時期で、販売店では照明の提案に力を入れたものだ。

 蛍光灯よりはるかに長寿命となったLED照明に切り替わったことで、年末の照明需要は以前より盛り上がりに欠けるとも指摘される。ただ、年末商戦で家電量販店などの小売店を訪れる消費者は多く、「ついで買い」での購入にもつながるのが照明。その際、IoT化といった付加価値を訴求することで、より快適、省エネでさらには楽しめるような明かり環境をイメージさせる提案が重要になってくる。