2023.01.01 【AV総合特集】各社の23年事業戦略 新たな体験の場を作る 消費者の要望に応える製品提供

 国内のAV関連機器の市場は1兆3000億円規模(電子情報技術産業協会)で、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大以降は微減が続いている。22年は世界的な半導体不足や部材不足の影響を受けるとともに、中国などでのロックダウンにより製品供給などで苦戦を強いられたところもあった。

 コロナ禍での〝巣ごもり〟需要や特別定額給付金などにより20年から21年にかけては、家庭内でのエンターテインメントにも目が向き、テレビなどは需要が回復した。東京五輪・パラリンピックによるテレビ関連の需要増もあったが、22年は踊り場に立っているのが実情だ。

 コロナ禍3年目に入り、22年夏以降は政府による行動規制も緩和され、消費は家庭内から観光や外食などに向き始めた。さらにここにきて円安や部材不足による物価高騰、電気料金の値上げなど消費マインドを冷えさせる事象が相次ぎ、市場環境は一層不透明感が増している。

 特に原材料費の高騰などにより新製品への価格転嫁を余儀なくされるケースも出てきている。電気料金の値上げなども重くのしかかるが、これをマイナスに捉えるのではなく省エネ製品への買い替え促進につなげていければ、消費者にとってもメーカーや流通にとってもプラスに働くことは間違いない。これまで以上に提案の手法が重要になってきているともいえる。

 実際、消費者のニーズは多様化し、生活シーンに合わせた製品提案が課題だ。特にAV機器などを選ぶ際にはより良い製品を購入したいという要望も高まっているため、主要メーカー各社も利用シーンに合わせた機能の強化や提案に力を入れてきている。

 テレビは大画面化が進むとともに高画質や高音質といった本来の機能を強化しており、生活に合わせた提案も始まりつつある。スマートホームの実現に向けてインターネットに接続できる製品群も増えてきた。こうした新しい動きをいち早く消費者に伝えていくことが求められており、23年は新たな体験の場を作ることが各社の命題になりそうだ。

 電波新聞社がこのほど主要AVメーカー各社首脳に行ったインタビューでは、より消費者の要望に応えられる製品の提供が不可欠になってきていることを強調した企業が多かった。特にAV機器やオーディオなどの機器は趣味嗜好(しこう)の部分も多い。生活シーンを快適にしていくだけでなく、より豊かにしたり、余暇を過ごせたりしていくための提案も重要になる。各社のインタビューから23年の方向をひも解く。