2023.01.01 【AV総合特集】’23展望 ホームシアター

店頭では手軽にホームシアターの臨場感を体感できるサウンドバーからオブジェクトオーディオまで幅広く提案

3年ぶりにリアル開催したOTOTENでも立体音響のデモに関心が集まった(写真はdts)3年ぶりにリアル開催したOTOTENでも立体音響のデモに関心が集まった(写真はdts)

 大画面で高画質な高精細4Kテレビが普及するとともに音質についても目が向くようになってきている。迫力ある大画面に見合う音を楽しみたいという人も増えており、テレビメーカー各社は、画面に負けない臨場感のある音作りを始めている。ここ数年は映画館と同じような音響を家庭でも楽しめる立体音響の規格も出ており対応する機器も増えてきた。2023年は立体音響への関心がさらに高まるとみられる。

 テレビの高音質化はこの数年メーカー各社の命題にもなっている。4K液晶テレビや4K有機ELテレビは薄型設計で高音質化が難しいと言われていたが、各社はスピーカーシステムや重低音を担うウーハーシステムなどを工夫し、デザイン性を損なわずに高音質化を実現してきている。デジタルの音響補正技術の進歩もあり、テレビ単体での音質改善が飛躍的に進んできている。

 特にこの1~2年は映画館と同様の立体音響への対応が加速している。立体音響に対応したコンテンツも増え、一般家庭でも身近になってきた。ここで課題になってくるのが、映画館と同様の音響システムを家庭で構築できるかどうかということになるだろう。

 従来は家庭で映画館のような音を実現するにはホームシアターシステムを構築してきた。ドルビーデジタルによる前方左右2スピーカー、前方中央スピーカー、斜め後方左右2スピーカーに低音のウーハーを組み合わせた5.1チャンネルが主流で、米国などでは本格的なシアターシステムを構築するインストーラーと呼ぶ事業者が多くいる。国内でもホームシアターシステムを構築するベンダーも多い。

サウンドバーも

 ただ本格的なシステムを構築するにはスペースの確保も大変なため、最近はデジタル技術を使い仮想的に後方からの音を再現するデジタルサラウンドが普及し、テレビ前方に置く「サウンドバー」と呼ぶ棒状のスピーカーで実現できるようになってきた。

 前方の左右2スピーカーと低音のサブウーハーによる2.1チャンネルサラウンドが一般的だ。壁などに音を反響させデジタル処理で臨場感を出す。テレビ内蔵のサラウンドも同様のデジタル技術を駆使しており、現在、多くのテレビで前方スピーカーのみでのシアター音響を仮想的に実現している。

 さらに、ここ数年は5.1チャンネルなどのサラウンドシステムではなくオブジェクトベースオーディオが浸透してきた。特にこの1~2年でオブジェクトベースの立体音響が一気に拡大してきている。これまでのスピーカー数をチャンネルごとに割り当て駆動する「チャンネル」型オーディオに対し、オブジェクトベースオーディオは、映像内の対象物(オブジェクト)の動きに合わせて音を割り当て、スピーカー数を多くすることでより臨場感を出せるのが特徴で、自分自身が映像の中の世界にいるような体験ができる。

アトモスなど拡大

 オブジェクトベースオーディオの一つに12年にドルビーラボラトリーズが発表した最新のシネマ音響「ドルビーアトモス」がある。映像などに合わせて音を映画館内で移動させるため、現実と同じ空間にいるような音が体感できる。アトモスは多くのハリウッド制作スタジオに採用され、対応した映画タイトルが多く出ている。ドルビーアトモスに対応したAVアンプやテレビの音響システムも増えている。

 同様に15年には米DTSがマルチチャンネルオーディオ技術「DTS:X」を発表し、最大32スピーカーまで対応し従来型のチャンネルスピーカーでもサラウンド効果が得られる特徴を生かし普及してきている。22年のOTOTENではdts Japanが「DTS:X」発表から初めて出展し、IMAXとともに展開している「IMAXエンハンスト」を披露し、家庭でもIMAXシアターの臨場感のある音響が楽しめることを訴求した。あわせてワイヤレスでスピーカーを接続し本格的な立体音響が楽しめる日本未発売の「DTS Play-Fi」を公開するなど新たな動きが出始めてきている。

 現在、オブジェクトベースオーディオはアトモスやDTS:Xを中心に拡大しているが、3Dオーディオやイマーシブ(没入感のある)オーディオと呼ばれる領域も注目されてきている。包み込まれるような360度の音響という意味でドルビーアトモスが先駆者として先導するが、ソニーの360リアリティオーディオも注目されている。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)と合わせて使うケースやゲームでも対応が始まっている。

 立体音響はテレビの機能としても対応が進んできた。パナソニックは業界で初めてテレビ本体に上向きスピーカーを設置し、テレビのスピーカーのみで本格的な立体音響を体験できるようにした。主要テレビメーカー各社もスピーカーシステムを対応させてきている。立体音響は23年もさらに対応の幅を広げていきそうだ。