2023.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’23年各社の戦略 東芝ライフスタイル 小林伸行代表取締役社長
小林 社長
エアコン、省エネ性訴求
他社だけでなく自社比較も
昨年は、為替の影響が大きく、増収ながら減益となった。サプライチェーンでコスト吸収を図ったが、素材価格の上昇など複数の要因が組み合わさったことでどうしようもない面もあり、製品を一部値上げせざるを得なかった。
昨年11月には、エアコンのフラッグシップ機「K-DRシリーズ」を発売した。
7年ぶりのフラッグシップ機で、マイディアグループ(美的集団)の技術やリソースを生かし、省エネや快適性など他社製品と遜色ないレベルに仕上げた。
省エネ性能の追求は、グローバル市場全体から見るとこれまでは日本がガラパゴス的だったと言えるが、今では環境負荷低減の考えからも、日本の省エネに対するこだわりはグローバルスタンダードになると本社を説得し、K-DRシリーズを開発した。日本から技術者を派遣するなど協力しながら開発した製品で、今後に期待している。
昨年4月には組織体制を変更し、空質、キッチン、リビングなど生活シーンや空間に合わせて製品を開発できる体制にした。横ぐしで情報連携できるようにし、これまで製品化できていないものについても開発することを目指している。
日本の家電市場は成熟しているが、それでも当社が売り上げを伸ばし、シェアを拡大する余地はあると思っている。
新しいカテゴリーの製品も出していきたいと思っているが、当分、主要6製品(エアコン、冷蔵庫、洗濯機、オーブンレンジ、炊飯器、掃除機)を市場に浸透させることが重要になる。これらにリソースも重点的に配分していく。
また、新型コロナ下で利用が増えたことで、消費者のEC(電子商取引)に対する心理的なハードルが下がっている。家電については小型品が中心ではあるが、大型品についてもECで購入するといったケースも増えている。今後は直販も検討していくことが必要かもしれない。
海外事業も拡大傾向にある。マイディアの販売網を生かして東芝ブランドの展開エリアを拡大するなど、うまくシナジーを出せている。
今年の市場環境は、例年以上に見通しにくいと感じている。物価高もさらに進行すると思われ、行動制限の緩和で家電以外への消費に回る傾向も強まっている。
ただ、どんな状況になっても生活家電はなくてはならない存在になっている。家電でもサステナビリティー(持続可能性)や環境負荷低減を訴求することはますます重要になっている。当社製エアコンでも、高級機と普及機との省エネ性の違いによる電気代の差など、他社比較ばかりでなく自社比較での提案も大切だと思っている。
製品の価値を認めてもらえる伝え方を実践していけば、ユーザーに共感してもらえると思っている。
厳しい市場環境ではあるが、今年も増収増益を目指す姿勢は変わらない。生活を豊かにする家電の販売で、社会に貢献していく。