2023.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’23年各社の戦略  三菱電機 鈴木聡常務執行役リビング・デジタルメディア事業本部長

鈴木 常務執行役

IoT基盤接続機器増やす

データ集約・分析、付加価値を創出へ

 昨年は、4~6月に上海ロックダウンや電子部品の需給逼迫(ひっぱく)などの影響があり、国内や中国、北米向けの家庭用・業務用空調機器の販売が落ち込んだ。素材価格や物流費も高騰し、事業環境は厳しかった。

 ただ、7月以降はロックダウンの影響も落ち着き、正常化に向かった。上期(4~9月)では空調・家電セグメントは6627億円と前年を上回る結果となり、現在も販売は順調だ。

 こうした中、当社はIoT基盤「Linova(リノバ)」に接続する機器を増やしている。統合アプリ「MyMU(マイエムユー)」による一括操作や機器の連動運転も提供できるようになっている。MyMUは昨年6月、新機能を追加したバージョンも公開し利用者を着実に増やしている。

 リノバの活用によってエンドユーザーの利便性を向上させるとともに、集約されたデータを分析し、家庭用から業務用までさらなる付加価値の創出にも取り組んでいる。

 例えば、クラウドに接続されたルームエアコンの動作を分析し、夏季の夜間、個人に合わせて睡眠中に自動でオン/オフする機能を開発した。ほかにもエアコンに搭載しているセンサーで在室人数を検知し、換気システムの強度を制御するようなシステムも開発している。

 IoT家電を使った新たなサブスクリプション(定額課金)サービスの提供も始める。エアコンや冷蔵庫など当社製IoT家電をインターネットに接続し、リノバを介して一人暮らしの高齢の親などを見守るサービス「MeAMOR(ミアモール)」を2月3日から提供開始する。カメラなどの専用機器や設備が不要で、プライバシーを守りながら生活状況を見守ることができるサービスだ。

 一方、業務用では、クラウドに機器を接続して稼働データを活用することで、販売後の保守・修理・買い替えのライフサイクルでユーザーをサポートできるようにしている。循環型のビジネス支援として提案しており、業務用空調機器を対象とした「AirCoNet(エアコネット)サービス」では、空調機器の故障時の対応が迅速に行えることに加え、機器の状態をモニタリングし、故障前にその兆候の検知や通知を可能にしている。

 リノバを生かし、家庭用から業務用まで顧客に適したソリューションの開発や保守・サービスの提供に取り組んでいる。今後は社内だけでなく、パートナー企業とも連携しながら進めていく考えだ。

 中期経営計画で空調冷熱システム事業は、2025年度に1兆2600億円の売り上げを目標に掲げている。既存事業の強化と新規事業の創出による両輪で推進していく。

 23年度の市況も、素材価格の高騰や不安定な為替相場など不透明な環境が続くことが想定されるが、脱炭素やデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れは新たなチャンス。当社の強みを発揮できると考えており、中期経営計画の達成に向けて弾みをつけていきたい。