2023.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’23展望 スマートホーム

太陽光発電や蓄電池も脱炭素社会のスマートホームには重要

スマホなどで手軽にスマート化

 ネットワークでつながり、快適性と効率性、利便性などを実現するスマートホームへの注目度は年々高まっている。コロナ禍により自宅で過ごす時間が増えたことで、住空間を快適にしたいというニーズはいっそう強まった。こうした市場環境の下、スマートホームは現代のニーズを満たす選択肢の一つと言える。

 赤外線通信を行うルームエアコンやテレビ、照明などをスマートフォンから操作したり、スマートスピーカーから音声操作したりすることを可能にするスマートリモコンを導入し、手軽にスマート化する家庭も増えている。

 玄関ドアのスマート化を例に取ると、部屋の実例写真を共有するSNS「RoomClip(ルームクリップ)」で、2022年の年間アワードのキーワード部門においてスマートロックがベスト10入りを果たした。

 スマートロックはスマートホーム化の鍵を握る製品ともいえ、両手がふさがった状態でもドアを開閉できる利便性に加え、後付けタイプもあるなど、選択肢の広がりが普及を後押ししている。住設大手のYKK APは顔認証でドアを解錠する玄関ドアを展開しており、コロナ禍で利便性が広がった顔認証システムが、一般家庭にも入り始めた。

 クラウドにつながる家庭用ロボットやスマートスピーカーを軸に家庭内のスマート化は進んでいる。同時に、住設機器の高効率化とネットワーク対応もスマートホームには重要な要素だ。11年の東日本大震災を境に〝死語〟になったオール電化は、ガスを含めたエネルギー利用の観点から近年、その効率性が再評価されてきた。

 特にエコキュートの需要が強く、16年度以降は毎年、前年を上回る出荷台数となっている。日本冷凍空調工業会(JRAIA)の統計によると、15年度に約40万7600台だったのが21年度には約60万7600台にまで拡大し、震災前の10年度に記録した約56万6400台という過去最高の年間出荷台数を上回った。昨年も1月から11月まで毎月、前年伸長を続け、11カ月間の累計出荷台数は約63万台にまで膨らんだ。

 エコキュートの出荷が伸びている背景にあるのは、導入から10年以上経過した買い替え需要の下支えが大きい。加えて、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー住宅)の普及で、高効率給湯器であるエコキュートが再注目されたことも要因としてある。

[[太陽光も需要増]] 太陽光発電の卒FIT(固定価格買い取り制度)案件が住宅で増えていることも需要を押し上げている。ロシアによるウクライナ侵攻以降、電気をはじめとするエネルギー価格の高騰が家計を圧迫しており、省エネ・節電に対する世間的な関心はかなり高い。そうした中、太陽光で発電した電気をいかに自家消費するかは卒FITした家庭にとって重大な関心事だ。

 初期のFIT価格は1kWh当たり48円や42円だった。これが卒FITすると、例えば東京電力ホールディングスであれば、1kWh当たり8・5円へと買い取り価格が大幅に下がる。

 現在の電気料金と比べると自家消費のメリットは明らかだ。昨年末、政府の負担軽減策の適用で2月からの電気料金が値下げされると発表されたが、それでも東京電力の平均モデルの電気料金は1kWh28円。値下げ前の1月に至っては同35円という高値だ。自家消費するために利用されているのがエコキュートになる。

 エコキュートではIoT対応によって太陽光発電と連携する機種が増えている。太陽光で発電した電力をエコキュートのお湯沸き上げに使うことで、自家消費に生かせる仕組みだ。翌日の天気予報に基づく太陽光発電の余剰電力を予測し、効率的に自家消費する機能なども備える。

 ただ、エコキュートだと電気を使って自家消費を増やすことはできるが、全ての余剰電力を消費できるわけではない。そこで活用されるのが蓄電池だ。

 蓄電池はまだ価格が高く、加速度的に普及が進んでいる状況とはいいがたい。日本電機工業会(JEMA)の統計では21年度、住宅向けとなる定置用リチウムイオン蓄電池は約13万4000台を出荷。毎年、右肩上がりの出荷が続く。

 家庭内の機器をネットワークでつなげて快適性と利便性を高めるとともに、エネルギー利用を完結する住宅が、脱炭素社会を迎えるこれからは重要だ。太陽光発電と蓄電池はその鍵となる。蓄電池もクラウドにつながることで、効率的な充放電制御を実現するようになっている。

 さらに、電気自動車(EV)の普及が本格化している。EVに備える蓄電池は住宅用として売られているものよりも容量が大きい。太陽光で発電した電力をEVにため、車の動力源にしたり、夜間に放電して家庭の電力として使ったりと、蓄電池代わりに利用する「V2H」の提案も活発になってきた。

 家庭にあるさまざまな機器を個別に制御するのではなく、連携させることでスマートホームとしての魅力は一段と高まる。家庭内には多様なメーカーの製品が混在しているため、全てをつなげることは現状では難しさもある。

 半面、アマゾンやグーグル、アップルなどのグローバル企業が推進するスマートホームの標準規格「Matter」で相互運用性を担保しようとする動きが加速する。今年もスマートホーム関連から目が離せない。