2023.01.11 【電子部品総合特集】双信電機 杉山雅彦社長 ノイズなく通信、電力を送る

杉山 社長

 当社の業績は2021年度は好調に推移し22年度も当初はその勢いが続くと考えていたが、22年6月ごろから少し流れが変わってきた。売り上げは堅調だが利益は円安でのマイナス影響を受けた。

 特にパワーエレクトロニクス事業のノイズフィルターは、マレーシア工場産品を輸入するため、円安が影響し、加えて航空輸送の増加もコストを圧迫した。これを機に再度社内体制を見直す必要がある。情報通信事業は円安メリットを享受できたが、民生市場よりの製品のため、22年後半以降は需要が不安定となっている。

 ノイズフィルターは半導体製造装置やロボット向けなどで先納期の受注も入っているため23年も堅調な売り上げが予想される。だが半導体ファウンドリーの投資が24年以降、踊り場を迎えるとされるため、23年後半ぐらいから半導体製造装置にも影響が出てくるとみている。情報通信事業は北米市場の不安定さが当面は続くと思う。

 23年度(23年12月期)に向けた戦略は、当社は21年11月に台湾ウォルシンが親会社となりPSAグループに加入したが、特に積層誘電体フィルター事業では、ウォルシンとの連携を強化しウォルシンの生産技術を活用していく。両社の製品を合わせることで製品ポートフォリオ拡大にもつながる。22年は販売面や技術面などのさまざまな打ち合わせも実施した。23年は成果が表れてくると思う。

 パワーエレクトロニクス事業は、採算性向上のための製品見直しなども進めるが、一方で当社が強みを持つ半導体製造装置や工作機械、ロボット向けなどは次世代の製品にも取り組み、現在のナンバーワンシェアを維持していく。21年から22年にかけ、誘電体フィルターや厚膜印刷基板を中心に大きな設備投資を実施した。23年は市場が弱含みのため少し投資は抑制するが、22年までに拡張した増産設備を有効活用していく。また、ウォルシンの設備も大きな能力を有するため、それを活用した生産量拡大へのシナリオも検討する。

 22年6月の社長就任後、目的、存在意義について「ノイズの無い世界を作る」というメッセージを発表した。フィルターやコンデンサー、ノイズ測定サービスなどを通じ、ノイズなしで通信や電力が送れるようになることを目指していく。これでカーボンニュートラルに貢献したい。